« №2328 第94回ナイト倶楽部コンペ | トップページ | №2330 東京の名庭園見学講座の下見 »

2014年5月12日 (月)

№2329 4月に読んだ本

 毎月月初めには、前月読んだ本の報告をしている。大体10日前後に記事を書いているが、今月は若干遅れた。この記事は、自分の本の対する心構えのつもりで書いている。あまり読んでいただくことは期待していない。とはいうものの、反響も少なくない。

 先日、ある友にズバリ、「シンさんの読書って、ほとんど飛ばし読みでしょう。あまり心に残っていないようだし、読むとすぐ忘れてしまうのって、読書は無駄じゃないかしら」と、普段から気にしていることを言われてしまった。

 そういう面がないわけでもないな。次々と本を読むのに忙しくって、じっくり噛みしめて読むことは少ない。先日、こういうことがあった。毎回、図書館で限度の10冊借りてくるのだが、そのうち5冊がすでに読んでいることが検索で分かった。選書の時に、読んだことを忘れているのだ。活字を追うことを何よりの楽しみにしている身には、それでもいいのだと言い聞かせている。

 さて、4月は結構重要な本を何冊も読んでいる。そういう意味では、充実した月間だった。結局、4月は11冊・5128頁と目標は達成した。それでは何を読んだのかを列記したい。

沢木耕太郎『人の砂漠』 新潮文庫

城山三郎『本当に生きた日』 新潮文庫

山本兼一『銀の島』 朝日新聞出版 2011年6月刊

服部真澄『天の方舟』 講談社 2011年7月刊

城山三郎『冬の派閥』 新潮社 1983年1月刊

村山由佳『すべての雲は銀の…』 講談社 2001年11月刊

逢坂剛『さらばスペインの日日』 講談社 2013年11月刊

真保裕一『天魔ゆく空』 講談社 2011年4月刊

宮尾登美子『湿地帯』 新潮社 2007年8月刊

船戸与一『満州国演義8 南冥の雫』 新潮社 2013年12月刊

山本兼一『利休にたずねよ』 PHP研究所 2008年11月刊

Dsc00929  4月に一番印象に残ったのが、逢坂剛『スペインの日日』である。私は逢坂剛の大ファンで、逢坂ものはほとんどすべて読んでいる。特に、彼の小説は長編なので、読み応えがあって良い。海外モノも刑事モノも好きだ。

 この小説は「スペインシリーズ」全7冊の最後の一冊である。原稿用紙8000枚、ページ数にして4000ページに上る大長編ロマンだ。小説が始まって15年、ようやく完結した。私はこの小説を読み、スペインの虜になった。10年ほど前に、スペインも旅行してますますスペインが好きになったきっかけのシリーズである。

 話は第二次世界大戦、スペインは謀略戦の舞台であった。主人公北都昭平はペルー国籍を持ったれっきとした日本人である。スペインで宝石商をしながら、ヨーロッパ情勢をスパイしている。登場する人物には、須磨弥吉郎日本公使、ウィルヘルム・フランツ・カナリス提督など魅力ある人物も登場する。さらに、イギリスの女性諜報員ヴァジニア・クレイトンとの恋も描かれた。

 最終巻は、第二次大戦末期だ。ドイツが降伏し、ヒトラーが自殺をした。日本の諜報員の最後の仕事は、日本をどのようにうまく軟着陸で降伏させるかという難題だった。ヨーロッパ情勢を見ている北都にとって、どう考えても日本の勝利の道はなかった。しかし、日本軍部は蛸壺というか、世界情勢には通じていなかった。

 この小説で、逢坂がいかに多くの文書を読み込んで小説の構想を練ったのか、頭が下がる思いだった。完結を機に、いずれ再度全巻を通して読んでみたい。

Dsc01101  さらに、記念碑的な読書が船戸与一『満州国演義8 南冥の雫』だ。この小説も、船戸与一が、自分の生涯をかけて語り続ける反戦小説だ。2年に一冊くらいのペースで出版を続け、最後に近づいている。船戸は、敷島四兄弟の生き様を通して満州国の興亡を語り続けている。

 敷島太郎は満州国の官僚、敷島次郎は馬賊を経た風来坊、敷島三郎は満州に派遣されている憲兵、敷島四郎は日本での挫折を経て満州にわたり、満州映画に所属していた。その4人の生き様を通しながら、満州国とは何だったのか考えさせる小説になっている。

 第8巻『南冥の雫』は、大東亜戦争(第二次大戦)も末期、インパール作戦を中心に描かれている。日本は、ミッドウェー海戦の敗北で、すでに制空権や制海権を失っている。物資の不足も叫ばれている。一方、政府は陸軍と海軍の対立で二進も三進もいかない、誰も判断できない不能の状態に陥った。東条首相を誰が首にするか、喫緊の課題であった。

 そういう中、無謀な作戦が推し進められた。それがインパール作戦だ。この作戦を進めたのが牟田口司令官だ。この牟田口の後ろに黒幕辻政信がいた。この小説全般を通して、辻政信の犯罪的行為を、船戸は大いに怒っているのが読みとれる。

 このシリーズ最後の一冊が用意されているらしい。いつ出版されるのか、楽しみにしている。

Dsc00934Dsc01096  新しい作家の発掘があったのも、この4月だ。今さらと思うかもしれないが、山本兼一という作家に初めて触れた。読んだのは『銀の島』と『利休にたずねよ』だ。

 私が山本兼一の存在を知ったのは、朝日新聞の書評欄を通してだ。これだけ小説を読んでいるようでいて、まだ読んでいない重要な作家のいるのを知り愕然とすることがある。さしずめ、山本兼一などもその一人だ。

 早速『銀の島』を読み、その面白さに続けて『利休にたずねよ』を読んだ。いずれも、歴史小説大好きの私を満足させる小説だった。

 『銀の島』は、フランシスコ・ザビエル神父異聞といった様相の小説だった。フランシスコ・ザビエルとその裏にいる商人ティオゴ・バラッタは、日本を略取しようとしたのではなかったのか、というのが山本兼一の視点だった。

 ヨーロッパにとって、当時の日本は宝の山だ。とくに石見銀山の銀の埋蔵量は魅力あるものだった。日本の銀の公定価格は、国際価格に比して不当に安かった。バラッタは、日本に根拠地を作り、兵力をもって銀の略取を図ろうという計画を立てた。ミステリー仕立てになっているこの小説は、また別の面での歴史小説の楽しみ方を教えてくれた。

 『利休にたずねよ』も、利休切腹の天正19年から、日にちを遡っていくという小説仕立てだ。作りの斬新さに目を見張って、ワクワク読んだ。当時、茶の湯に対する権力者の思いはなぜあんなにも高かったのか。

 この作品は直木賞を受賞し、昨年は映画にもなった。残念ながら、私は観ていない。私より10歳も若かった山本は、残念にも今年2月に肺がんで亡くなったという。これからも、山本作品は読んでいきたいと思う。

|

« №2328 第94回ナイト倶楽部コンペ | トップページ | №2330 東京の名庭園見学講座の下見 »

読書日誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« №2328 第94回ナイト倶楽部コンペ | トップページ | №2330 東京の名庭園見学講座の下見 »