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2015年12月11日 (金)

№2909 11月に読んだ本

 毎月、月初めには前月読んだ本の報告をし、3~4点の書評を試みている。この記事は10日までには出したいと思っているのだが、旅行のために今月は一日遅れた。

 11月は多くの大作を読んだ。中でも、500頁を超える本が5冊もあった。長編小説でも、物語の中に入ってしまえば、あっという間に読み終わる。ただ、辛いのは100頁を超えても、物語が立ち上がらない小説だ。ある人は、「そんな小説は駄作で、すぐに捨ててしまうべき」と評していたが、私は一度読み始めた本は、どんな駄作でも最後まで読み切ってしまう。

 幸い、11月はそんな小説には当たらなかった。このところ、読了は月に5000頁越えをコンスタントにクリアできている。11月は12冊・5575頁の本を読んだ。何を読んだのか、具体的に列記したい。

安部龍太郎『恋七夜』 集英社 2007年2月刊

江國香織『金平糖の降るところ』 小学館 2011年10月刊

高橋克彦『ジャニー・ボーイ』 朝日新聞出版 2013年11月刊

荻原浩『花のさくら通り』 集英社 2012年6月刊

安部龍太郎『生きて候』 集英社 2002年10月刊

高橋克彦『かべゑ歌麿』 文藝春秋 2013年7月刊

飯島和一『狗賓童子の島』 小学館 2015年2月刊

白川道『世界で最初の音』 角川書店 2014年12月刊

白川道『神様が降りてくる』 新潮社 2015年3月刊

火坂雅志『沢彦(たくげん)』 小学館 2006年8月刊

柴田哲孝『小説下山事件 暗殺者たちの夏』 祥伝社 2015年6月刊

池井戸潤『下町ロケット2 ガウディ計画』 小学館 2015年11月刊

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 11月に読んだ本で抜群に面白かったのが、『沢彦』である。私が火坂雅志の本を読み始めたのは、この2~3か月前からである。読んで分かったのだが、火坂の時代小説はたしかに面白い。

 『沢彦』は724頁の大作である。持ってずしりと重い。普通の小説の1.5倍の分量であったが、あっという間に読み終わったしまった。テーマは、私の大好きな戦国時代、信長である。

 沢彦は、信長が吉法師と呼ばれている頃から、信長の教育係を務めていた。若いころ「うつけ」とみられていた信長だが、沢彦は彼の天稟を見いだして、武将としての様々な知恵を授けていた。信長も【師僧】として沢彦に信頼を寄せていた。

 桶狭間で今川義元を破ったのも、彼のアドヴァイスであった。美濃を制覇した信長に【天下布武】の印を授け、岐阜の名をつけたのも沢彦だった。やがて信長は京に上り、天下統一へと着実に一歩を踏み出していった。

 実力をつけた信長は、沢彦のアドヴァイスを聞かなくなったどころか、邪魔者扱いをするようになった。決定的に袂を分かったのは、比叡山の焼討事件である。思い上がった信長に打撃を与えようと、明智光秀を使った。そして、本能寺の変で打倒してしまった。

 物語としては大変面白かったが、本当に沢彦はいたのか。図書館でどんな大きな「歴史人名事典」を調べても、沢彦の名前はなかった。

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 飯嶋和一は、その作品数こそ少ないが、きらりと光る。彼の代表作はほとんど読んでいる。検索してみると、『始祖鳥記』『雷電本紀』『出星前夜』『黄金旅風』『神無き月十番目の夜』等だ。記録をみると、『雷電本紀』は1995年に読んでいるから、もう20年も前になる。もちろん、内容は覚えていない。

 本書は、飯嶋和一の久し振りの新刊になる。舞台は隠岐の島だ。江戸末期、大塩平八郎の乱に連座して、西村七右衛門の息子、十五歳の西村常太郎が隠岐の島に島流しされた。

 常太郎は、隠岐で島の医師に医術を学び、疱瘡やコレラ、悪性の【傷寒】から島民を守る活動をしていた。隠岐の島は離れ小島のようであるが、北前船の寄港地として、栄えていた。従って、外からもたらされる病気にも敏感だった。

 島の貧弱な医療技術では、対応できない病気も現れた。疱瘡に牛痘が良いという情報をもたらされたが、閉じられた島ではなかなか説得力を持たなかった。幕末、隠岐の島を収める松江藩からは過酷な年貢米の徴収があり、島では大きな騒動が持ち上がった。

 かくも離れた隠岐の島でも、幕末の騒動では大きな影響を受けた。飯嶋の着実な筆致は、きわめて説得力のあるものだった。非常に面白かった。

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Dsc06917 以前、ある友だちに進められて読んだのが、同著者の『下山事件 最後の証言』というノンフィクションだ。

 戦後間もなくのどさくさで、国鉄初代総裁の下山貞則が、常磐線の列車に轢かれて死んだ事件だ。事件当時から、自殺か他殺かで論が分れていた。他殺も、共産党の謀略からGHQの労働組合弾圧のためという議論まで大きく分かれていた。

 著者の柴田哲孝は、祖父が「私は実行犯」として、謎の証言を残して死んだ。前回のノンフィクションでは、下山事件を充分に語り尽くせなかったという。そこで、今回はフィクションの想像力を持ってこの事件の謎を解こうというものだった。

 そこで、大胆な推論をこの本では展開していた。下山貞則は、彼の運転手に5分程車を離れると言い残し、三越本店に入店していった。運転手は、いつまでたっても帰ってこない下山を、そこで夕方まで待ち続けた。

 ただ、行方不明の下山を巡って、国鉄本社では大騒動が起きていた。警察を動員しても、杳としてその行方は掴めなかった。実際には、ほとんど証拠も残っていない。フィクションの手法で限界を感じた柴田は、想像力を働かせて、彼がどこに監禁され、轢死体として発見されるにいたったのか。

 大胆に推理していったのが本書だ。ただ、これには裏付けがないので、あくまでもフィクションなのだ。松川事件、三鷹事件を含め、戦後間もなく日本で起きた不可解な事件は多かった。

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 この本は、海外旅行中に読もうと思って、旅行鞄に入れた。ただ、あまりの面白さに、飛行機と第一泊目の宿で読み終えてしまった。この話はテレビドラマになり、朝日新聞にも連載されているが、私はテレビドラマは見ないし、連載小説も読まない。

 従って、この本が本書に触れる初めてだ。以前読んだ『下町ロケット』も面白く、夢中になって読んだ。前回は、ロケットエンジンのバルブの話だったが、今回は人工心臓のバルブを作る話だ。

 品川の中小企業佃製作所は、たえず倒産の危機にさらされている。大企業の帝国重工からある試作品の制作を依頼された。しかも、原価割れの値段である。将来の大量生産を見越して、泣く泣く引き受けた。ただ、その発注には裏があった。

 池井戸は、ストーリーテラーとしては上手だと、いつも感心してしまう。彼の小説は1頁目から没入して読ませる、という意味では稀有な作家だ。

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