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2016年5月 8日 (日)

№3057 4月に読んだ本

 毎月の月初めには、先月読んだ本の報告をし、2~3冊の感想を述べている。

 3月末から4月にかけて、ハワイを旅してきた。旅行鞄に忍ばせたのは、池井戸潤の文庫本だ。その旅行で読み残した本を、月初は集中して読んだ。ただ、池井戸の文庫はまだ2冊残っている。頁数を稼ぐのには格好の本だ。

 私の好きな作家は両手に余るほどいるのだが、その作家の本もあらかた読み終わってしまった。少しずつ作家の数を稼ごうと、今まで読んだことのない作家に手を染め始めている。今月読んだのは、久坂部羊・中原清一郎・見延典子・椰月美智子・橘玲等の作家だった。

 私の好きな作家はほとんど期待を裏切らないが、初めて読む作家は良い作品もあれば期待外れの作品もあり、選択が難しい。このところ、目標はコンスタントにクリアしている。4月に読んだ本は、13冊・5457頁であった。

 具体的に何を読んだか列記し、2~3の本の感想を述べたい。

池井戸潤『最終退行』 小学館文庫 2007年5月刊

池井戸潤『不祥事』 講談社文庫 2011年11月刊

池井戸潤『ようこそ、わが家へ』 小学館文庫 2013年7月刊

安部龍太郎『義貞の旗』 集英社 2015年10月刊

久坂部羊『神の手(上)(下)』 NHK出版 2010年5月刊

中原清一郎『カノン』 河出書房新社 2014年3月刊

馳星周『復活祭』 文芸春秋 2014年9月刊

見延典子『敗れざる幕末』 徳間書店 2012年4月刊

半藤一利『真珠湾の日』 文芸春秋 2001年7月刊

椰月美智子『恋愛小説』 講談社 2010年11月刊

宮本昌孝『尼首二十万石』 講談社 1997年8月刊

橘玲『タックスヘイブン』 幻冬舎 2014年4月刊

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 見延典子の本を読むのは初めてだ。なぜこの本を手に取ったかというと、タイトルの【幕末】にひかれてだ。見延とはどういう作家なのか、一切の事前情報はなかった。ところが読んで非常に面白かった。この作家は、頼山陽に関心を持っているようだ。

 小説の主人公石川渕蔵は、頼山陽の晩年の弟子だ。頼山陽は『日本外史』の著者として有名だが、石川は頼山陽の晩年作『日本政記』の仕上げを手伝った。この本を完成しないまま、頼山陽は亡くなった。ここまでがこの小説の前段で、この後が面白かった。

 石川渕蔵は『日本政記』を携えて、故郷の福山から江戸に出た。水戸派との交流の中で、福山藩の藩主で時の老中阿部正弘と出会うことになった。石川は阿部に重く用いられた。時は幕末、アメリカのペリーの江戸湾侵入等で、日本は大揺れだった。尊王攘夷か開国か、国の世論は二分していた。

 この小説でよくわかったのは、若き英邁阿部正弘がいかにこの時代を乗り切ろうかと、深く苦悩したという。30代の半ばで亡くなった阿部正弘の後を継いだのが、彦根藩主の井伊直弼だ。彼の強引な政策【安政の大獄】でで、若い開明派を死に追いやった。そして井伊は、結局は【桜田門外の変】で暗殺されたのだが。

 今までほとんど注目していなかった阿部正弘の偉さが浮き彫りになった小説だった。非常に面白かった。見延典子に『頼山陽』という小説がある。後先逆になるが、これも読んでみよう。

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 久坂部羊の小説も初めてだ。久坂部羊は、私よりも10歳ほど若い作家だ。とはいっても、すでに還暦は過ぎたようだ。大阪大学医学部を出て医者をやっていたが、作家に転じた。医者といえば、九州大学医学部を卒業した私の大好きな作家帚木蓬生がいる。概して、医学の周囲を題材にした小説が好きだ。

 この小説の主題は【安楽死】についてだった。久坂部羊は現役の医者であり、しかも老人医療や終末期患者の専門家として数々の修羅場に立ち会ってきた人のようだ。こういう人でなければ描けないような、非常に臨場感に満ちた作品だった。

 主人公の古林章太郎は、白川という21歳の末期癌患者の担当になった。白川は、あらゆる緩和ケアの薬が効かない痛みに耐えかねて、「殺してくれ」と依頼していた。母はテレビのコメンテーターで、忙しくてほとんど息子の見舞いにも来ない。叔母もその痛みを見かねて、古林に安楽死を依頼した。当時、安楽死は殺人罪となっていた。

 密室で、叔母の立会いの下に安楽死を決意した。その死が後々の大問題になり、古林を本人の意向とは別に時の人としていった。一方で、国会では【安楽死法案】をめぐって、賛否両論の論争があった。それに、日本医学会の解体をめぐってのドロドロもあり、小説は意外な方向に展開していく。

 感想としては、あまり余分な話に展開せずに、安楽死に特化したほうがすっきりした小説になったのではないかと思う。それでも面白かった。

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 ハワイの真珠湾を見物してきたので、 おのずと本書を手に取った。半藤一利は、私の信頼する作家の一人だ。 彼は、文芸春秋の編集長をやり、奥さんは夏目漱石の孫という異色の作家だ。主に、日本の近代史を題材に小説を書いている。私の関心ともぴったり合う。

 昨年夏に見た映画『日本のいちばん長い日』の原作者でもある。非常に感動した。『真珠湾の日』は、いわば『日本のいちばん長い日』と対をなす作品である。

 日米開戦にまつわる本は、これまでたくさん読んできた。ただ、真珠湾に特化した本は今まで読んでこなかった。真珠湾攻撃では、日本がアメリカに宣戦布告する前に攻撃が始まった。アメリカは「卑怯な仕打ち」と、国をあげて反撃する要因になった。

 ところが、アメリカは日本の秘密電報をすべて解読し、この攻撃はあらかじめ知っていたという。この攻撃でアメリカ国民の怒りを待っていた、という見方もある。当時の軍部は、あらためて、無謀なことをしたものだと思う。

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