« №3578 軽井沢一泊 | トップページ | №3580 写真データの消失 »

2017年10月 9日 (月)

№3579 9月に読んだ本

 8月には思うように進まなかった読書だが、9月はその反省で読書ピッチが上がった。いつもそうなのだが、よく読んだ月の翌月はその反動で落ち、読めなかった翌月はピッチが上がる。

 そして、9月は何よりも面白い本にたくさん出合ったのが、ピッチを上げた要因でもある。結果は、9月は14冊・5,566頁の本を読了した。さて、何を読んだのか列記したい。その上で、いつものように2~3冊の本の感想を述べたい。

諸田玲子『炎天の雪(上)(下)』 集英社 2010年8月刊

中島京子『長いお別れ』 文藝春秋 2015年5月刊

渡辺裕之『偽証オッドアイ』 中央公論新社 2015年1月刊

中路啓太『うつけの采配』 中央公論新社 2012年2月刊

小前亮『中原を翔る狼』 文藝春秋 2012年2月刊

沢木耕太郎『春に散る(上)(下)』 朝日新聞出版 2017年1月刊

和田竜『村上海賊の娘(上)(下)』 新潮社 2013年10月刊

久坂部羊『嗤う名医』 集英社 2014年2月刊

熊谷啓太郎『ピコラエヴィッチ紙幣』 ダイヤモンド社 2009年10月刊

香納諒一『無縁旅人』 文藝春秋 2014年3月刊

高嶋哲夫『日本核武装』 幻冬舎 2016年9月刊

Photo
 沢木耕太郎は、私と同時代の作家である。彼の小説は大好きで、『深夜特急』以来のファンだ。何より、肌が合うというのかな、不思議と彼の小説を読んでいると、最初の一行目から小説にドップリ漬かれるのがうれしい。

 この小説は、朝日新聞に連載されたいわゆる新聞小説だ。ただ、どんなに好きな作家でも、私は新聞ではなく、本になってから読む。この小説も手に入るのには、時間がかかった。まあ、急ぐわけではないのでじっくり待つことにした。以前は、新刊小説は誰よりも早く読んでいたが、まあ逃げることはないと手に入ってから読むようにしている。

 沢木耕太郎には、いわゆるボクシング小説として『敗れざる者たち』、『一瞬の夏』、『王の闇』などがある。この小説も、一風変わったボクシング小説といってもいいかもしれない。

 主人公は、若いころ世界王者を目指した元ボクサーである。挫折してアメリカにわたり、再起を目指したが叶わなかった。転身してホテルに働いたが、ホテルで大成功。以来30数年間、日本には帰らなかった。

 ひょんなことから、日本に帰ってみようと思い立った。日本には、以前一緒に世界を目指した3人の仲間がいた。帰国してその3人を訪ねたのだが、皆落ちぶれていた。その3人と日本で共同生活をすることを思い立った。

 ある時に、街で絡んできたチンピラを叩きのめした姿を見ていた若者がいた。彼もボクシングを目指していたが、挫折してぶらぶらしていた。4人で彼を鍛え上げ、世界タイトルに挑戦させようとした。ところがそんなに易しいものではなかった。

 夢中になって読んだね。

Photo_2


 諸田玲子という作家を私は知らなかった。読書履歴を読むと、彼女の『氷葬』、『奸婦にあらず』を読んでいるが、あまり印象に残っていない。だが、この小説を読んでで、しっかりと書ける歴史小説家だと認識を新たにした。

 この小説は、いわゆる加賀騒動が舞台である。加賀藩は、度重なる藩主の葬儀や相続の儀礼が続き、藩の財政が危機に瀕していた。財政危機を切り抜けようと、銀札を発行したのがつまずきのもとで、米価が40倍にも跳ね上がった。

 加えて宝暦9年の大火で、街には生活困窮者があふれ、世相は荒れた。富くじやばくち、泥棒が横行した。こういう時代を背景に、主人公白銀屋与左衛門の登場である。

 彼は能登から出てきて、白金細工人としてしっかりした顧客をつかんでいた。ところが、金沢の経済が破たんし、仕事がなくなっていった。もともと手先が器用なのを知った盗賊団の土蔵破りに加わった。そして、大泥棒になっていった。もとより、武士の娘から駆け落ちし、与左衛門の妻になったたみの知ることではなかった。

 この小説を読んで、金沢生まれのまっきぃに「金沢が舞台の素晴らしい小説を読んだ」と報告をした。彼は読んでみようと応じたが、読んだかどうかは確認していない。

Photo_3
 自分は大ベストラーは読まない。しかし、読んでみるとこれが面白い。著者の和田竜は、最近では『のぼうの城』で、直木賞候補として名前を挙げた。埼玉県行田の忍城を舞台にした小説で、石田三成の水攻めにも屈しなかったという話だ。映画にもなり、これも見た。

 『村上海賊の娘』は、2014年の「本屋大賞」に選ばれた作品である。この「本屋大賞」は、いまでは芥川賞や直木賞よりも売れるということのようだ。

 それより何より、この小説は面白かった。舞台は1570年、織田信長が大坂本願寺を攻めている時代だ。本願寺派は、毛利に救援を依頼した。当時、瀬戸内海を制していたのは村上海賊であった。

 中でも、村上海賊の当主村上武吉は絶大な信頼を得ていた。そして、主人公はこの村上武吉の娘景(きょう)である。景は、ある時門徒を送って大阪湾に船を乗り出した。武吉の許可を得ていなかった。

 知らず知らずのうちに大阪湾大戦に巻き込まれていく。海戦で出会ったのが、泉州の海賊眞鍋七五三兵衛である。死闘をくり返し、生き残った時には死線を彷徨っていた。

 手に汗を握りながら読んだ小説である。

|

« №3578 軽井沢一泊 | トップページ | №3580 写真データの消失 »

読書日誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« №3578 軽井沢一泊 | トップページ | №3580 写真データの消失 »