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2019年7月 8日 (月)

№4115 6月に読んだ本

 最近思うのだが、本を読んでいてどんな長編小説でも内容が面白ければどんどん進む。反対に、つまらない内容の小説は、短編でも時間がかかるものだ。詰まらなければ捨てればいいのだが、私のポリシーは一度読み始めた本は、最後まで読了することにある。一冊の本は大概2日で読み通すが、3日かかった本は失敗だ。今月はそういう小説が4冊あった。どの本とは言わないが、読み終えても内容の定かでない本もあった。こういう本を読み続けるのは辛いね。

 6月はもう少し読みたかったが、結果は13冊・5108頁だった。読書は集中力だ。昼の読書は注意が散漫する。勢い、集中できるのは夜の読書だ。ただ、野球のナイター中継があると、どうしても野球を見てしまう。さて、それでは6月は何を読んだのだろうか。

渡辺淳一『君も雛罌粟われも雛罌粟(上)(下)』(上)403頁(下)410頁 文藝春秋 1996年1月刊

内田康夫『孤道』326頁 毎日新聞出版 2017年5月刊

山崎光夫『曲直瀬道三』645頁 東洋経済新報社 2018年8月刊

森村誠一『南十字星の誓い』394頁 角川書店 2012年7月刊

白石一文『記憶の渚にて』489頁 角川書店 2016年6月刊

鳥越碧『兄いもうと』333頁 講談社 2007年7月刊

楡周平『ten』429頁 小学館 2018年9月刊

葉室麟『秋霜』316頁 祥伝社 2016年5月刊

福井晴敏『トゥレブ Y.O』335頁 講談社 1998年9月刊

藤田宜永『タフガイ』471頁 早川書房 2017年7月刊

池井戸潤『株価暴落』272頁 文藝春秋 2004年3月刊

久坂部羊『院長選挙』285頁 幻冬舎 2017年8月刊
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 私は図書館で本を借りるときには、基本的には二段組みの本は借りないようにしている。なぜなら、本を読むのになかなか頁が進まないからだ。ただ、なぜかしら本書を手に取った。この本は二段組みであり、さらに650頁弱の大作だ。どうも図書館の棚の中で、この本は「私を読んでください」と訴えているような気がした。著者の山崎光夫という人は知らなかったし、読んだこともない。しかし、挑戦してみよう。

 結果は大成功で、6月に読んだ中では一番印象深かった。曲直瀬道三という人はかすかに聞いたことはあったが、実情は何も知らない人だ。信長、秀吉、光秀が活躍する戦国時代、名医として活躍した。彼の基本的なポリシーは、誰のお抱えにもならず、権力者だけではなく、困っている人は誰でも診ようという町の医者に徹した。

 面白かったのは、彼は今の栃木県にある「足利学校」で学んだ。この学校は、全国の俊秀が集まる儒学の殿堂であった。生徒が集まるのは、そこにすばらしい教師がいるからだ。さらには仲間同士が励ましあい、お互い高みに行けるメリットもある。ただ、この学校でも抜群に秀でた曲直瀬道三だったが、医学を志したのはここの教師のおかげではなかった。田代三喜斎という優れた町医者に会ったからだ。若い頃の研鑽と旅の話が、この小説の主要なところだ。

 初めて権力者を診たのは、信長だった。信長には自分の侍医になるように勧められたが、断った。ただ、何時でもどこにでも不調な時には駆けつける約束をした。彼は敵味方関係なく、患者がいる限りどんな修羅場にも出かけた。しかも体の調子についての秘密は、誰にも洩らさなかった。敵大将の体の不調は、一番の軍事秘密だった。

 長じて京都に民間医学校を建設したが、3000人もの生徒を擁する一大学校に育った。戦国時代の歴史は、どうしても侍の活躍に目が奪われる。民間でこのように活躍した人がいたことに、蒙が啓かれる思いだった。
Sdscn0498_20190708121301  私は、このコーナーでずいぶん鳥越碧の本を紹介してきたと思う。今月もまた、鳥越碧の本を紹介したい。というのも、彼女の本は読むたびに印象に残るからだ。この小説の主人公は、正岡子規とその妹律の話だ。律は小さい頃から、「私は兄さんの嫁になるんだ」と公言していた。その思いは終生変わらなかったのか。彼女は気の進まぬ結婚を二度もして、その都度離婚していた。そして、子規が亡くなるまで献身的な看護をした。

 正岡子規は結核をこじらせ、最後は脊椎カリエスで満34歳で亡くなった。その闘病生活は悲惨なもので、拷問のような痛みを伴った。血膿、糞尿、ガーゼの取り換えから寝具の換えまで、大変な看病生活だったようだ。しかも子規はわがままで、律やお母さんにはずいぶんむごい要求もしていたようだ。

 子規は正岡家の自慢の息子で、家族は彼の要求に耐え続けた。子規の周りは、人に恵まれた。経済的には隣に住む日本新聞社陸羯南に世話になった。死ぬまでその新聞社の社員として、望外な給料が支払われていた。秋山真之、夏目漱石、森鴎外なども友だちだった。されに、弟子筋では高浜虚子、河東碧梧桐、伊東左千夫、長塚節など昭和の俳句界を作った錚々たるメンバーがいる。

 ただ、この小説の幹は、律の子規への献身だったのではないか。脊椎カリエスがどんなに痛みを伴うものなのか、現在その病が克服されてしまい、この病気で苦しむ人はいないとのことだ。

Sdscn0503_20190708124701  最近ちょくちょく森村誠一の本を読む機会が多い。森村誠一といえばすぐに思いう嗅げるのが、満州で人間の生体実験をやっていた石井部隊を告発した「悪魔の飽食」だ。話題になってもう40年にもなる。それ以来、森村のイメージは「社会派の旗手」である。刑事ものの小説もたくさん書かれているが、私が読むのはやはり時代を告発した小説だ。

 今回の小説は、戦争中シンガポールを占領した日本軍の戦時下、「世界に誇る文化財を保持する植物園」を守るために活躍した一女性外交官の話だった。祖母の富士森繭は、孫の由香にシンガポールで植物園を守る活動を知らせぬままに亡くなってしまった。由香は祖母の活動に興味を持ち、シンガポールで取材活動を続けた。

 繭がシンガポールで活動していたことを知っている人はわずかに残っていた。その取材をもとにできたのがこの小説のようだ。この小説を読むにつけても、日本がいかにむごい戦争を仕掛けたものか、改めて考えさせられた。

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