カテゴリー「読書日誌」の124件の記事

2021年4月10日 (土)

№4856 3月に読んだ本

 毎月10日前後に、前月読んだ本の報告をしている。毎月の報告とはいいながらも、実はこの報告は苦痛を伴う。読んだ本の報告だけならいいのだが、その後2~3冊の本の感想を述べている。その感想が大変なのだ。何度も申し上げているが、私は実によく本を読む。しかしその実相は、読み終わったらすべて忘れてしまうのだ。だから感想といっても、その内容を思い出す必要がある。そんなに苦痛ならやめたらいいのに、と思う人もいるかもしれないが、この記事はブログ始まってから続いているので、やめるわけにもいかない。

 まあ、忘れるのは読む意味がない、という人もいるだろうが、これが私の読書スタイル、と開き直っている。言ってみれば、活字を追うのが楽しいのかもしれない。いろんな読書の方法があっていい。私の読書スタイルはこれなのだ。

 年をとると、活字を追うのが辛くなる。というのも老眼が入り、眼鏡がないと本を読めないという話をよく聞く。幸い、私も老眼ではあるが、近眼の方が強い。近視眼鏡をかけたら、活字がぼやける。活字を読むときには眼鏡をはずす必要がある。女房は老眼で、それこそ家のあちこちに老眼鏡を置いている。

 苦痛と思いながらも、3月に読んだ本を報告したい。3月は15冊・5579頁の読了だった。ペースとしてはまずまずか。一日200頁の読了を目的にしているが、3月は一日180頁くらいだった。この一日20頁は結構大きな壁だ。

江上剛『狂信者』381頁 幻冬舎 2014年11月刊

船戸与一『灰塵の暦 満州国演義5』469頁 新潮社 2009年1月刊

辻原登『卍どもえ』455頁 中央公論新社 2020年1月刊

藤田宜永『奈緒と私の楽園』254頁 文藝春秋 2017年3月刊

柴田哲孝『漂流者』328頁 祥伝社 2013年9月刊

伊東潤『囚われの山』412頁 中央公論新社 2020年6月刊

八木荘司『大和燃ゆ(上)』316頁 角川書店 2009年9月刊

八木荘司『大和燃湯(下)』311頁 角川書店 2009年9月刊

大沢在昌『漂砂の塔』648頁 集英社 2018年9月刊

堂場瞬一『衆』365頁 文藝春秋 2012年5月刊

馳星周『陽だまりの天使たち ソウルメイトⅡ』330頁 集英社 2015年10月刊

藤田宜永『怒鳴り癖』277頁 文藝春秋 2015年10月刊

葉室麟『緋の天空』339頁 集英社 2014年8月刊

伊集院静『琥珀の夢(上)小説鳥居信治郎』341頁 集英社 2017年10月刊

伊集院静『琥珀の夢(下)小説鳥居信治郎』353頁 集英社 2017年10月刊

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 3月に読んで一番面白かったのが、伊集院静『琥珀の夢(上)(下)』であった。サブタイトルにもあるように、この小説はサントリーの創業者鳥居信治郎と、その後継者を描いた小説だった。数年前、NHKの朝の連続ドラマで、「まっさん」というドラマがあった。私はあまり朝の連続ドラマは見ないが、その主人公まっさんは、ニッカの創業者竹鶴政孝を描いたものだった。そのドラマにも出ていたのかもしれないが、竹鶴は鳥居信治郎のもとで10年間ウィスキー作りをしていた。

 鳥居信治郎は、大坂道修町の小西儀助商店で丁稚として働いた。この店は薬問屋だったが、主人小西儀助は本業とは関係ないワイン造りに没頭していた。その手伝いをしていた信治郎は、独立して自分もワイン造りを志した。その当時日本を席巻していたのは、浅草の電気ブランだった。外国産を除いて、電気ブラン以外はほとんど取引の対象外だった。

 何とか自分で作ったワインが認められるように工夫した。そしてできたのが「赤玉ポートワイン」である。このワインは、健康促進を旗印に売ったという。それが次第に認められるようになって、電気ブランを席巻しだした。ただ、信治郎が目指したのはこのワインではなく、ウィスキーである。昭和の初めころだが、ウィスキーといえばイギリス産のスコッチウィスキーで、日本のウィスキーは誰にも相手にされていなかった。

 そのウィスキーを認めさせるべく、信治郎の奮闘が始まった。京都の山崎に醸造所を作り、竹鶴政孝を招き、ウィスキー造りを始めた。ところが、ウィスキーは樽で5年から10年寝かせて熟成させる必要があった。その間、信治郎の資金は続くのか。資金作りにと、信治郎はあらゆる事業に手を染めた。そして、ようやく飲めるようになったのが、ウィスキー造りを始めて10年経ってからだ。ただ、出来たウィスキーもすぐには売れなかった。

 ウィスキーがようやく認められるようになって、次に始めたのがビール造りだった。このビール業界も、キリン、アサヒ、サッポロの三大会社が寡占状態で、新規参入は容易ではなかった。最近でこそようやく認められ始めたサントリービールだが、この苦闘の物語も続く。久し振りに一気に読んだ評伝であった。

Dscn2797_20210409114201  古代を描く小説は浪漫があって好きだ。私は八木荘司の本は初めて読んだのだが、タイトルが面白そうなので手に取った。読み進むうちに、この小説は中大兄皇子(のちの天智天皇)の朝鮮白村江の戦いの物語と知った。今までも何冊か白村江の戦の小説は読んでいたのだが、なぜ白村江なのかはわからなかった。しかし、この小説ではっきりした。

 中大兄皇子は、中臣鎌足と諮って当時の権力者蘇我馬子を殺害し、大化改新を成し遂げた。当時、朝鮮半島には高句麗、新羅、百済の三か国が鼎立していた。大和朝廷は、百済と強い関係を維持していたのだが、百済が唐の支援のあった新羅に滅ぼされた。

 当時、唐は女帝則天武后が支配権を握っていた。新羅を味方につけて、唐は高句麗と戦っては退けられていた。退けられた唐は、しかし高句麗支配をあきらめていなかった。この朝鮮情勢は、大和朝廷にも無縁ではなかった。大和朝廷が恐れたのは、朝鮮を征服した唐が、日本をも襲うのではないかということだ。白村江の戦は、そういう中で起きた。日本は新羅と唐の連合軍に完膚なきまで叩きのめされた。

 唐が日本襲来を企てないかどうかの外交交渉が続く一方、大宰府を中心にした守りを固め、瀬戸内海にも唐の船に対抗するする砦を作った。さらに大和を襲うと恐れた中大兄皇子は、都を海から遠い近江に移したのだ。どうやら、則天武后は日本を狙う意図はなかったようだが、そのどさくさを巡る話だった。古代を描く小説は浪漫があっていいね。

 実はこの小説にはもう一つの側面があって、額田王を巡る中大兄皇子と弟の大海人皇子とのさや当てだった。額田王は大海人皇子の奥さんの一人だったが、中大兄皇子が強引に横取りをした。ただ額田王は大海人皇子に思いを寄せていて、兄弟関係はぎくしゃくした。

 この月は、古代を巡るもう一つの小説も読んだ。葉室麟『緋の天空』だ。この小説は、聖武天皇の御代、女帝を巡る話だった。

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 昨年12月にも馳星周の『ゴールデン街コーリング』を読んでの感想を述べたが、私は馳星周はてっきり暗黒街を描くノワール(不条理)作家だと思っていた。そのつもりで彼の小説を読んでいるのだが、この小説はまるきり違っていた。馳の犬に対する全面的な愛を表現しているものだった。ノワール小説もいいが、こういう作品もよかった。

【4月9日の歩行数】11,859歩 7.9km

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2021年3月13日 (土)

№4828 2月に読んだ本

 この記事は、毎月10日前後に書いている。ところが今月は日程の都合で、この日までずれ込んでしまった。楽しみにしてくれている方には申し訳ない。記事アップが遅れたからといって、この記事を書いていないわけではなかった。すでに一週間も前に、骨子は出来上がっていたのだ。

 毎年のことではあるが、2月は通常月よりも2日か3日短い。ということは、400~500頁読む量が少なくなる。それでも最低5000頁は読了しようと、緊張して2月を迎える。今までの記録を繙いてみても、意外と2月は目標を達成している。緊張感のなせる業であるとは思う。

 読書意欲が衰えないというか、年をとってもどんどん本は読めるのは嬉しい。ただ、私の読書は「読み散らかし」というか、次から次へと読んでいくので、前に読んだ本をかみ砕いている暇がない。従って、読んだ本の内容はほとんど覚えていない。まさに読書というよりも「本の消費」である。いろいろな読書の形態はあるかもしれないが、私の読書の形態は次から次へと渉猟することだ。そして、私の「読書スタイル」として納得している。

 渉猟は、今度はどんな内容の本が書かれているのか、本をとる楽しみがある。私は、読書には100頁ルールがあると思っている。ある小説を100頁読んで面白くない小説は、失敗作だ。読書にはその100頁を読むガマンが必要、と思って読む。毎回言っているが、失敗作でも最後までは読むが、忍耐が必要だ。2月は14冊・5,426頁を読了した。まあ、及第月だったね。

 それでは何を読んだのか紹介し、いつものことだが2~3冊の感想を述べたい。

前川麻子『これを詠んだら連絡をください』327頁 光文社 2004年7月刊

澤田瞳子『若冲』358頁 文藝春秋 2015年4月刊

船戸与一『軍狼の舞 満州国演義3』417頁 新潮社 2007年12月刊

乾浩『斗満(トマム)の河』503頁 新人物往来社 2008年8月刊

秋山香乃『氏真、寂たり』475頁 静岡新聞社 2019年9月刊

植松三十里『梅と水仙』325頁 PHP研究所 2020年1月刊

久坂部羊『老父よ、帰れ』283頁 朝日新聞出版 2019年8月刊

大沢在昌『夜明けまで眠らない』414頁 双葉社 2016年12月刊

中山可穂『マラケッシュ心中』370頁 講談社 2002年10月刊

堂場瞬一『決断の刻』347頁 東京創元社 2019年7月刊

澤田瞳子『落花』410頁 中央公論新社 2019年3月刊

安部龍太郎『姫神』261頁 文藝春秋 2015年8月刊

佐々木譲『抵抗都市』476頁 集英社 2019年12月刊

船戸与一『炎の回廊 満州国演義4』460頁 新潮社 2008年6月刊

Dscn2739  今月読んだ中で一番印象に残ったのが、乾浩『斗満(とまむ)の河 関寛斎伝』であった。そもそも、北海道を舞台にした小説には興味があり、面白い。乾浩さんという人は知らないが、斗満という題名に興味を抱いた。

 関寛斎は、千葉県の東金生まれの人だ。若いころ、佐倉の順天堂医学塾で蘭医学を学んだ。江戸末期、開業していた銚子でコレラがはやった。コレラに対処するために、関は長崎に留学し、ドイツ人医師ポンぺに師事した。医学を修め一度銚子に戻った関は、請われて四国徳島藩蜂須賀家の侍医になる。関は、幕末の戊辰の役でも傷ついた将兵の看護を買って出、敵味方なく戦傷者の看護をやった。

 四男の又一が札幌農学校に入学し、北海道開拓を志したのに共鳴した関は、自身北海道に移住し、開拓に身を投じたのは実に67歳の時だった。ここからが話の本筋だ。北海道の原野を借り受け、開拓がはじまった。原野1000町歩の開拓を始めた主役の又一が兵役に出た。自ずとその重みが、老人寛斎にかかってきた。不慣れなアイヌを使役しての開拓作業は困難を極めた。

 北海道開拓の本を読むと、どうしてもアイヌとの向き合い方が問われる。開拓の歴史は、行ってみればアイヌ虐待の歴史でもあると感じる。この小説でも、アイヌのことが描かれていた。

 それやこれやでようやく開拓の道筋ができた。ただ、兵役から帰ってきた又一と寛斎は、経営方針で対立した。寛斎の働く人を自作農へとの方針に対し、又一は大農経営には小作農が必要と相容れず、さらには孫から財産相続問題で訴えられる。奥さんも病気で亡くし、失意の晩年だったようだ。この本に感銘してさらに乾浩の本を探したが、見つからなかった。

 私の読んでいる本は、かつて読んで感銘を受けた作家がほとんどだ。ただ、それだけでは窓口が狭いと新しい作家も探している。今月読んだ新しい作家は前川麻子、沢田瞳子、中山可穂などである。今まで読んでいない作家は、作品が少ないとか、私の趣味に合わないとかでなかなか手に取らない。ただ不思議に思ったのは、中山可穂『マラケッシュ心中』である。以前読んだことがあるなと思って読み進めたが、私の「読書ノート」にその記録はなかった。

Photo_20210312112101  今月印象に残ったもう一冊は、沢田瞳子の本の『若冲』だ。彼女も、どちらかというと歴史小説作家で、今まで見逃がしていた。『若冲』に興味を持ったのは、お正月のNHKテレビドラマで同じタイトルの『若冲』を見たからである。本の表紙にあるように、若冲は専門に鶏を描いた江戸末期に活躍した京都の画家だ。

 彼は京都の錦小路で生まれたが、長男であるにもかかわらず一切商売にはタッチしなかった。その分、弟たちが面倒をみざるを得なかった。若冲が活躍した時代、今日には池大雅、丸山応挙、谷文晁等錚々たる絵師が活躍していた時代だ。ただ、若冲はひたすら鶏の絵を描いた。

 私は何度か京都の錦小路を歩いた経験があるが、各店のシャッターには若冲の鶏の絵があったと覚えている。いまでもあるのかどうかはしらないが、改めて若冲がここの出身だと知った。沢田瞳子『若冲』に感銘を受け、『落花』も読んでみたが何ら印象に残らなかった。

【3月12日の歩行数】12,325歩 8.3㎞

【3月12日のアクセス数】109アクセス 訪問者75人

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2021年2月15日 (月)

№4802 積まれた本を消化する

Dscn2754  すでにご報告しているが、私の読む本は市立図書館から借りてくる本が大半である。借りてきた本は、写真を撮って【読書ノート】に記録し、その後にパソコンの机の脇の大に載せておく。借りてきた本は最大10冊、2週間が限度である。この限度があるから、読書に拍車がかかる。あまり返すのが遅くなると、図書館から催促の電話がかかってくる。この電話が来る前になるべく返したい。

 2月1日時点で、この台の上に7冊の本が載っていた。返却期限は2月8日である。積まれた本はどんどん読んでいく。この本の山が低くなっていくのは痛快だ。そして2月9日にはあと一冊残すのみになった。2月は通常月より3日少ない。それだけ読むスピードを上げる必要がある。

 まあ、読んだ本は期限前でも返却しようと、図書館に行った。返却と同時に新たな本を借りるのが楽しみだった。ところが真の悪いことに、私が行った二回とも図書館は休館だった。一つは臨時休館だったし、もう一回は休日休館だった。いつも不満に思っているのは、図書館は市民へのサービス業務だ。休日に一緒に休むとか、公務員の業務が終わる5時に閉めてしまうのは違うんじゃないかな。

 とはいっても、休館日を確認しないで図書館に行く私も迂闊だった。返却するだけなら返却ポストがあるのだが、同時に新しい本も借りたい。3日ほど遅かったが、前回借りた10冊をすべて読み終わって、返却しながら新たな本を借りに行った。

 今回も10冊借りてきたのだが、返却期限をみたら3月6日になっていた。あれ返却期間が一週間長いなと思ったら、2月末から3月上旬までまた一週間休館するという。3月6日まで待っていられないので、休館前に本を返しに行って、新たな本を借りてくることにしよう。図書館の休館日は注意しておかなければいけない。

【2月14日の歩行数】10,755歩 7.2㎞

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2021年2月 9日 (火)

№4796 1月に読んだ本

 この記事は、毎月10日前後に書いている私のブログの定例記事だ。前月何を読んだのかを報告し、何冊かにコメントを載せている。さて、1月の読書はどうだったのだろうか。

 ずいぶん、日常は読書三昧で過ごしているつもりなのだが、結果を見ると例月通りであった。1月は、何か足を引っ張るような大作があったのだろうか。前にもお知らせしているが、船戸与一「満州国演義」(全9巻)を読み始めた。今月は(1)(2)巻を読んだのだが、これに5日間かかった。

 ふつうは1冊読み終わるのに2日間ほどかかる。2冊で800頁弱だったから、そんなに悪いペースではない。どうしても読書には波がある。ドンドン読める時と、なかなか前に進まない日があるが、内容が面白いかどうかもあるが、一種のバイオリズムであろうか。コンスタントにじっくり読みたいとは思うのだが、なかなかそうはいかない。1月は13冊・5430頁の読了だったが、まあ、平均的だったね。

 それでは具体的に何を読んだのかを紹介し、2~3冊にコメントを入れたい。

柴田哲孝『ISOROKU 異聞・真珠湾攻撃』467頁 祥伝社 2017年7月刊

白石一文『プラスチックの祈り』643頁 朝日新聞出版 2019年2月刊

高嶋哲夫『ハリケーン』302頁 幻冬舎 2018年1月刊

小前亮『唐玄宗紀』311頁 講談社 2013年2月刊

熊谷達也『我は景祐』490頁 新潮社 2019年1月刊

池上永一『海神(わだつみ)』474頁 中央公論新社 2020年9月刊

船戸与一『風の払暁 満州国演義1』383頁 新潮社 2007年4月刊

船戸与一『事変の夜 満州国演義2』414頁 新潮社 2007年4月刊

堂場瞬一『独走』375頁 実業之日本社 2013年11月刊

楡周平『終の盟約』432頁 集英社 2020年2月刊

三田誠広『白村江の戦い 天智天皇の野望』315頁 河出書房新社 2017年7月刊

萩耿介『笑う執行人 女検事・秋月さやか』337頁 角川書店 2017年5月刊

藤田宜永『ブルーブラッド』487頁 徳間書店 2019年11月刊

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 前にも申し上げたが、船戸与一の「満州国演義」を再読し始めた。以前に第1巻を読んだのは2008年5月だったから、13年ぶりだ。そして、最終巻第9巻は2015年6月に読んでいる。1・2巻は同時に出版されたのだが、それ以降は飛び飛びで、完結したのが2015年だった。船戸は、このシリーズが完結して間もなく亡くなった。まさに遺書というべきシリーズだ。彼は私と3学年違いだから、そんなに歳は取っていなかった。いまから見たら、若かったというべきか。

 私は、船戸の本は『砂のクロニクル』(1992年)以来のファンである。主要作はほとんど読んでいるのではないか。彼は冒険小説といわれるジャンルの小説家で、血沸き肉躍る話が大好きだ。しかも大作を得意としている。昨年も彼に二段組の小説『蝦夷地別件』(上・下)を読んで、しばらく振りに船戸ワールドを楽しんだ。私は船戸の本を読むと、「ゴルゴ13」を思い起こさせる。

 満州国演義は、大正から昭和にかけて日本が満州をいかに経営したか、4兄弟を通して描いている。長男の敷島太郎は東大出身の外交官で満州総領事館に在籍し、次郎は馬賊として満州国を駆け回り、三郎は満州国の関東軍憲兵として活躍した。4男の四郎は無政府主義演劇弾をやっていたが続かず、上海にやってきたという設定になっている。兄弟が、それぞれ別の道を歩み始めた。

 今1巻と2巻を読み始めたが、半年くらいで読み終わりたいと思っている。

Dscn2714  藤田宜永が亡くなったのは昨年2020年1月であった。私よりも4歳も若い死だった。これからまだ新刊が出るかどうかはわからないが、この小説は死後の最新刊である。藤田宜永も私の好きな作家のひとりで、ほとんどの小説は読んでいるのではないか。

 【読書ノート】であらためて「藤田宜永」を繙いてみた。今までに藤田の本は51冊読んでいた。いつ読んだのかを見たら、2010年には月一冊は読んでいた。その後も3年ほどは断続的に読んでいた。彼の既読リストを見ると、同じ本を4冊ほど再読しているのもわかった。どうやら藤田の本は、軽く読めるが、印象が後まで残らないということか。それでも好きで読む作家である。

 本書は、主人公貝塚透馬が戦争から復員してきたら、軽井沢に住んでいた両親が、何者かに打ち殺されていた。その犯人を追う話である。「ブルーブラッド」というのは貴種という意味で、両親は貴族だった。しかし、戦争の空襲で広大な自宅は何も残っていない。唯一、疎開していた軽井沢の別荘だけが残り、そこに避難していた両親が殺害された。

 その殺害を唯一目撃していたのが、別荘の隣に住んでいたメイドの八重だった。国際犯罪に広がるナチスの残党を追う作品で、楽しく読めた。

 なお藤田の奥さんでもある小池真理子も、私の大好きな作家の一人だ。 

【2月8日の歩行数】13,053歩 8.7㎞

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2021年1月15日 (金)

№4771 昨年は誰の本を多く読んだか

 自分でも呆れてしまうのだが、私のブログ記事は長文である。読む人などいないと思いながら書いているのだが、さすが書いている本人も飽きてしまうほどだ。本人が飽きるほどだから、読む人などいないだろう。今年はその反省の下、なるべく短文にしたい。急ぐ記事があるわけでもないので、長文になったら続きを翌日に回そう。そう思って今日の記事を書く。

 昨日の記事で昨年の読書総括をしたのだが、それでは一体誰の本をよく読んだのか記してみたい。前にも話したように、図書館が半年ほど休館して使えなかった。代わりに本棚にある蔵書を探して読んだ。これが大成功だった。なかでも、逢坂剛の再発見は、彼の文学的な意味も含めて大きかった。私は好きな作家を読んでいるのだが、彼のほかにも大沢在昌、伊東潤、楡周平、佐々木譲、馳星周などを再読した。

 昨年読んだ作家の上位10作家を並べて、コメントを付けてみたい。

①逢坂剛 40冊

 昨年は圧倒的に「逢坂剛の年」だった。6月から8月にかけては、ほとんど読んだ本が逢坂剛である。私の読書ノートには出てこない前史では、山本周五郎、池波正太郎、吉川英治などの多作な作家を読んでいたが、改めてリストを見ると逢坂剛の多作ぶりがうかがわれる。これだけ読んだのにもかかわらず、逢坂剛にはまだ手を染めていない時代小説がある。読んだ逢坂のシリーズ本を総括してみると、

Dscn2393_20210114101101 A百舌シリーズ 8冊 

B岡坂神策シリーズ9冊 神保町が舞台の探偵小説。

Cイベリアシリーズ 7冊 このシリーズが一番好きだ。

Ⅾ禿鷹シリーズ 5冊などがあった。

 今、この文庫は横浜の兄に貸し出されている。果たして読んでいるのだろうか。

②大沢在昌 6冊

 大沢在昌の本もほとんどが再読である。彼も長編を書く作家だが、『欧亜純白Ⅰ・Ⅱ』が、日本軍部のアヘン政策を描いて傑作であった。

③佐々木譲 5冊

 佐々木譲も多作な作家だ。北海道警察ものなど私は大好きでよく読む。残念ながらほとんど読んでしまっているのだが。彼は榎本武揚なども書いているのだが、なんといっても最高傑作が「第二次大戦三部作」ともいわれる『ベルリン発飛行指令』、『エトロフ発緊急電』、『ストックホルムの密使』である。この際再読しようと探してみたが、見つからなかった。家のどこかに埋もれているのだろう。

③近藤紘一 5冊

Dscn2421_20210114104101  近藤紘一は、サンケイ新聞のベトナム特派員だった。今回再読したのだが、彼が話題になっていたのは1980年代だ。ちょうど南ベトナムが崩壊する現場に立ち会った。彼はベトナムの女性と再婚したのだが、その女性も生き生きと描かれていた。彼の本はまだまだ沢山蔵書していたはずだが、見つからなかった。Amazonで探してみたが、ほとんど絶版だったのは惜しい。いま近藤紘一を読む人がいないのだろうか。ロフ発緊急⑤門井慶喜 4冊

 門井慶喜も手堅い歴史小説の書き手だ。もっと読みたい気もするのだが、残念ながら作品が少ない。もっと多くの作品をと願って彼の年齢を調べてみたら、50歳と油ののり頃だ。今後とも期待したい作家だ。

⑤伊東潤 4冊

 伊東潤も期待の歴史小説作家だ。とはいってももう60歳だ。彼の小説も、図書館の本棚にある限りでは全部読んでいる。最初に読んだ『鯨分限』がよかったかな。

⑤楡周平 4冊

 彼の本もほとんど読んでいるはずだが、昨年読んだ本は本棚にあったものの再読である。

⑤堂場瞬一 4冊

 堂場も多作な作家だ。図書館に堂場の本が二段も並んでいるが、借りてくると大概は前に読んでいる。何を読んで未読は何か整理しようと思っているのだが、まだできていない。

⑤梁石日 4冊 

 彼のテーマは一貫していて、済州島とお父さんの記憶である。『タクシードライバー』の名作もあるが。

 以下、3冊には柴田哲孝、久坂部羊、鳥越碧、浅田次郎、赤神諒があった。

【1月14日の歩行数】12,057歩 8.1㎞

【1月14日のアクセス数】156アクセス 訪問者98人

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2021年1月14日 (木)

№4770 2020年の読書総括

 今年になって、このブログ記事で歩行記録にアクセス解析、一年間の記事検証とやってきた。そして最後に残ったのが「読書総括」だ。この記事も毎年書いていて、昨年は1月17日だった。何度も言うようで申し訳ないが、このブログの良いところは過去の検証が可能なことだ。紙の日記ではこうはいかない。特に、検索ができるのがいい。

Photo_20210113114401  一体、昨年は何冊の本を読んだのか。これも、新兵器EXCELのグラフで見てみたい。前にも申し上げたが、私の読書記録が正確に記録されるようになったのが2003年である。2006年までは年間100冊前後の本を読んでいたが、2007年からは数字が上がっている。要因は、2006年11月で定年退職したことである。それ以降は「読書生活」に入っている。そして、2012年からは大体年間160冊前後の読了冊数である。多いか少ないかは議論があるところだが、これが私の限界かな。

 短期的には頑張れるかもしれないが、ロングタームになると一歩一歩着実に読むのがいいのかな。昨年の総読了数は165冊であった。昨年はコロナ騒ぎで、いつも利用している市立図書館が長い間休館していた。私は90%以上を図書館に頼っていたのだが、さあ困った。そこで思いついたのが、家にある蔵書の再読である。

 30~40年前の本がほとんどだったが、これが新鮮だった。その当時読んだ本の内容は、ほとんど忘れていた。まるで新刊を読むようん気分だった。蔵書には連関がある。この本を読んだら、次はこの本という具合にだ。蔵書はあるはずなのに、探してみたが見つからなかった本が多かった。私は読んだら読みっぱなしで、ほとんど整理してこなかった。その報いである。

 それに、本を収納すべく大きな本棚を買うのだが、すぐにいっぱいになってしまう。ある時から本棚を買うのをやめた。それが本の散逸の原因でもある。現役時代は、本を探すよりも買うほうが早い、という安易な方法を取った。同じ本が何冊もある原因でもある。

Photo_20210113120001  それでは、具体的に何頁読んだのか。それも上記と同じような表になっているので見てみたい。これもほぼ読了冊数の表とパラレルになっているが、それでも若干ではあるが右肩上がりだ。昨年は67,824頁の読了だったが、2018年が67,705頁だったので、私の中では新記録だ。しかし、これが限界なような気もする。

 私は薄い本を読んで冊数を稼ぐようなことはしない。本を読むときにはなるべく厚い本、出来ることなら400頁を超えるものを選んで読んでいる。それでも、中には300頁前後の本もあるが、そういう本はほとんど一日で読んでしまう。結果、昨年は月平均13.75冊、5,652頁の本を読んだことになる。

 長くなったので、続きは明日の記事にしたい。

【1月13日の歩行数】10,971歩 7.4㎞

【1月13日のアクセス数】140アクセス 訪問者85人

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2021年1月10日 (日)

№4766 12月に読んだ本

 毎月、10日前後には前月読んだ本の報告をして、次月への反省材料にしている。さて、12月はどうだったのだろうか。

 いま私の生活は、読書を中心に回っているといっても過言ではない。それほど本を読むことに意識が行っている。ただ、もう一つ感じるのは、加齢とともに集中力が欠如していることだ。本を読んでいても長く続かず、すぐに他のことを考えてしまう。一日200頁は読もうと思っているのだが、実情は150頁がせいぜいである。

 本に集中力が注がれるのは、それが面白いと感じた時である。ところが、毎日読んでいると心躍るばかりではなく、忍耐を必要とする場合も多々ある。私は開いた本は必ず読むようにしているのだが、最近、忍耐で読んでいる本が多いのも事実だ。小説は100頁読んで物語が立ち上がらないと、それは失敗作だ。

 500頁以上もあるそんな本などとっとと捨てるか、読むのをやめればいいものの、そうもいかないのが私の性格だ。ある友だちに、「シンさんは本を読むというよりも頁を稼いでいるだけじゃないの」と痛いところをつかれるが、それが事実だけに反論ができない。まあ、それも読書の一つの形態、と居直っているのだが。

 さて、12月に読んだ本は13冊・5217頁であった。例月と違い、今月は何を読んだのか記し、ある本にまつわる私の記憶を書いてみたい。

鳥越碧『衣小夜がたり』220頁 NHK出版 2002年7月刊

諸田玲子『ともえ』293頁 平凡社 2013年9月刊

夢枕獏『大江戸火龍改』279頁 講談社 2020年7月刊

池澤夏樹『静かな大地』670頁 朝日新聞社 2007年6月刊

安部龍太郎『迷宮の月』413頁 新潮社 2020年4月刊

堂場瞬一『天空の祝宴』326頁 PHP研究所 2008年9月刊

佐々木譲『人質』293頁 角川春樹事務所 2012年12月刊

高村薫『我らが少女A』539頁 毎日新聞出版 2019年7月刊

加賀乙彦『ああ父よああ母よ』365頁 講談社 2013年3月刊

市川森一『幻日』388頁 講談社 2011年6月刊

門井慶喜『自由は死せず』557頁 双葉社 2019年11月刊

秋山香乃『龍が哭く』526頁 PHP研究所 2017年6月刊

堂場瞬一『絶望の歌を唄え』348頁 角川春樹事務所 2017年12月刊

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 この小説は、調布の野川公園での老女性画家の殺人事件であった。ところが539頁と大作にもかかわらず、物語のメリハリや山がなく、読むのに苦労した。大概の小説は、100頁を超えると物語にのめりこめる。ところが、何時まで経っても何が問題なのかわからなかった。こんな小説何度も投げ出そうかと思いながら、最後までで読んでしまった。

 それではなぜ取り上げるのか。この小説の舞台とわが青春が重なったからである。今までほとんど誰にも話してこなかったが、その青春の墓標について書いてみたい。直接には、この小説とは関係ない。

 この小説に出てきた野川公園は、私が住んでいたころはICUのゴルフ場だった。しかもこの公園を貫いて多磨霊園、小金井自動車試験場へと抜ける「東八道路」はまだ完成していなかった。いつ頃のことか考えてみたら、1966年ころではなかっただろうか。20歳で、上京して2年目であった。

 私は、アルバイトでアメリカ人のドライバーをしていた。主人のW氏は三鷹の大沢に住んでいて、まだ開通していない東八道路のすぐわきに家があった。私は三鷹の大沢から事務所のあった虎ノ門まで、朝晩の送り迎えをしていた。昼の間は暇なので、便利なボーイの役割だ。そのころは、すっかり大学進学をあきらめていたのだが、暇なので再度大学入試勉強をした。この事務所はアメリカの会計事務所の東京支店で、たくさんの公認会計士を抱えていた。そこで働く人々の姿をみて、私も会計士になろうという夢を持った。

 公認会計士になる一番の近道は、中央大学の商学部会計学科に入学することだった。ドライバーを始めたのは秋ごろで、その翌年の春の入学試験で、めでたく中大商学部会計学科に入学できた。公認会計士への道は開けた。

 ところがそのころの大学は、勉強するような雰囲気にはなかった。大学闘争の真っ最中で、しばしばストライキや大学封鎖が行われた。しかも中大・明治・日大・東大などがその中心で、お茶の水界隈は騒然としていた。中大商学部に入学しては見たものの、私はすぐに会計士になる道を断念した。ただ、ドライバーは2年ほど続けていた。

 私はW氏の家の近くの下宿に住んでいた。この下宿は、大半がICUの学生だった。朝食と夕食は、W氏のメイドさんが作ってくれたものを食べた。この家には、二人のメイドがいたのだ。W氏の食事の残りが供されたのだが、アメリカ人の食事が合わず、食べ残した。そのメイドに「私の料理が下手なので残すのでしょう」と嫌味を言われた。申し訳なかったので、出たものは全部食べる努力をした。例えば生野菜のニンジンやセロリなどだ。そのおかげで、好き嫌いは治った。

 旦那はアメリカ人で、奥さんはドイツ人だった。子どもは男の子2人、女の子が一人だった。アメリカ人がこういう生活を送っているんだと初めて知り、すべてが物珍しかった。50年以上も前の話なので、その後子どもたちがどうなったのかは知らない。

 この小説を読んでいながら、50数年前の当時のことを思い出したのだ。そういえば、高村薫もICUの卒業生だ。それ以降、この近くには行ったことがないね。

【1月8日の歩行数】8,707歩 5.8㎞

【1月8日のアクセス数】112アクセス 訪問者73人

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2020年12月28日 (月)

№4753 今年最後の図書館

Photo_20201228083501  年末年始は図書館が休館するとのことで、市立図書館に行ってきた。この図書館はちょくちょく休館があるので、年末はいつまでかホームページで確認していた。12月28日から1月11日までの2週間の休館だそうだ。12月27日(日)には、いま借りている本を返さなければと思って、計画的に読んでいた。ところが、最後の本に難航した。ふつう2日で一冊読むのだが、4日目なのにまだ読み終わらない。前回10冊借りたのだが、9冊目に難航していたのだ。

 難航していた本は、図書館の閲覧室で読み終わった。それも返却して、今回借りられる本は9冊だ。読みたい本の選択時間は、楽しみの一つだ。だが、興味を持っている本はほとんど読み終えている。私が選んでいる本は、好きな作家のものが中心だ。ところが、ほとんど読み終えているし、なかなか新しい作家に興味が広がっていない悩みがある。

Photo_20201228084901  そういう中で、9冊の本を棚から拾い出した。前にもお話したが、この中に前に読んだ本のダブりで含まれている。大概、表紙を見てこれは読んだことがあるなという匂いのある本は、自宅で登録してみるとやはり前に読んでいることがわかる。その匂いのある本は、別の本に差し替えることにしよう。ということで2冊ほど差し替えた。それでも自宅で登録してみたら、なお一冊のダブりがあった。

Photo_20201228085601  そうだ、船戸与一の最後の大作「満州国演義」を再度読んでみよう。このシリーズは全9冊で、第一巻が出たのは2007年である。そして完結したのが2015年だったが、出版される都度に読んでいた。船戸与一は、このシリーズ完結後、間もなく亡くなった。第8巻から第9巻までは4~5年の時差があった。新刊を読むときには、前の巻は忘れている。いずれ完結した時点で、全巻を再読しようと思っていた。

 棚を見ていると、いつも全巻揃っている。借りていく人は少ないのかもしれない。お正月を機会に再読しようと、まずは第1巻『風の払暁』を借りることにした。全巻が相当厚い本なので、頁を稼ぐのにも格好のシリーズだ。来年1年間でゆっくり読んでみたい。

 ということで9冊の本を借りてきた。最近歩行数を稼ぐために、図書館には徒歩で行く。図書館からの帰りは、新しく借りたほんへの楽しみでルンルン気分だ。足取りも軽く帰ってきた。

【12月27日の歩行数】11,230歩 7.5㎞

【12月27日のアクセス数】140アクセス 訪問者85人

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2020年12月 9日 (水)

№4734 11月に読んだ本

 このブログを書き始めて13年になるが、毎月この「前月読んだ本」を書き続けている。いつも申し上げているが、読んだ本はExcelの【読書ノート】に記しているが、その記録も3600冊を超える。もっとも、記録をつける以前に読んだ本もあるので、トータルで見ると5000冊にも上るであろうか。自慢をしているわけではないが、その割にはちっとも読んだ気がしないのは不思議だ。

 主に読んでいるのは小説であるが、奥が深いと感じる。その中でも、これだけ読んでいるのに知らない作家が多いのに驚く。さらに、以前読んだ本を忘れることも多い。まあ、発見があるから読書は楽しいのかもしれない。

 毎月最低5000頁の読了を自分に義務付けているが、義務が達成されるとホッとする。さらに【読書記録】で毎月の読書の総体を記録しているが、どうやら今年は過去最高の読書量になるようだ。まあ、そのことは1月の記事に取っておくが、11月は16冊・5709頁の本を読んだ。毎月記しているように、具体的に何を読んだのかを書き、印象に残った2冊の感想を述べたい。

津島稜『封印 警官汚職』433頁 角川書店 2009年8月刊

浅田次郎『おもかげ』377頁 毎日新聞出版 2017年11月刊

赤神諒『立花山将伝』295頁 講談社 2020年4月刊

笹本稜平『所轄魂 最終標的』415頁 徳間書店 2018年10月刊

久坂部羊『生かさず殺さず』307頁 朝日新聞出版 2020年6月刊

大沢在昌『爆身』508頁 徳間書店 2018年5月刊

伊東潤『ライトマイファイア』459頁 毎日新聞出版 2018年6月刊

柴田哲孝『チャイナ・インベンション 中国日本浸食』408頁 講談社 2012年11月刊

朱川湊人『なごり歌』282頁 新潮社 2013年6月刊

今野敏『ペトロ』351頁 中央公論新社 2012年4月刊

馳星周『ゴールデン街コーリング』381頁 角川書店 2018年12月刊

辻原登『不意撃ち』235頁 角川書店 2018年11月刊

柳広司『太平洋食堂』461頁 小学館 2020年1月刊

山田詠美『無銭優雅』228頁 幻冬舎 2007年1月刊

梁石日『魂の痕』270頁 河出書房新社 2020年1月刊

森詠『はるか青春』299頁 創美社 2007年7月刊

Dscn2592  この小説は、大逆事件を書いた歴史小説である。主人公は、和歌山の新宮に住む禄亭大石誠之助(享年43歳)である。私は興味があって大逆事件関係の本を何冊か読んでいるが、新宮の大石誠之助がなぜ犠牲者にならなければならなかったのか、不思議に思っていた。それだけに、この本はその解決の糸口になった。

 大石誠之助はアメリカで医学を学んだ医者で、地元新宮で開業した。「ドクトル(毒取る)さん」と慕われ、貧乏にんからは治療代を請求しなかった。さらに「太平洋食堂」を開き、貧乏人や子供等に食事を提供していた。海外を広く見てきた大石には、戦争や差別を嫌い、常に貧しい人の側に立って行動する人だった。自分から「社会主義者」を名乗った。

 そういう大石の元には、当時の社会主義者や文学者が集まってきた。菅野すが、堺利彦、与謝野鉄幹、幸徳秋水などである。特に幸徳秋水は時代の寵児で、絶えず支援者に囲まれていた。ただ幸徳は胸を病んでいて、長くは生きられないだろうと思われていた。大石は、わざわざ幸徳を訪ねて上京した。その行動の一部始終が官憲に捕えられていた。

 大逆事件は全くのでっち上げだったが、この事件でその当時の社会主義者、無政府主義者は一網打尽、24名もの死刑者を出した。大石誠之助も全く無関係だったが、明治政府に殺されてしまった。その時に監獄に入っていた堺利彦、大杉栄は無事だったのも皮肉というしかない。地元でパージを受けた大石誠之助だが、後に名誉回復された。いずれ夢中になって読んだ。

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 私は、馳星周の相当古い読者かもしれない。馳の処女作『不夜城』は1996年に発表されたが、私の読書ノートを繙くと、発表すぐに読んでいた。もっとも、この『不夜城』は相当話題を呼んだことは確かである。その後も、馳星周が新刊を出すたびに、追っかけファンとなった。いま改めて馳星周の本を検索したら、36冊に及んだ。ほとんど読んでいるということだ。

 馳星周を初めて知ったのは、『不夜城』ではなかったかもしれない。彼は「本の雑誌」に、坂東齢人として本名で書評を掲載していた。そのころから彼の書くものに注目していた。本名の「齢人」は、お父さんがレーニンを尊敬してつけた名前だという。

 そういう馳星周の追っかけファンだった私に、『新宿ゴールデン街コーリング』は彼の半生を知るいいきっかけでもあった。彼は北海道の学校を卒業して横浜市立大学に入学したが、大学にはほとんど行かずに新宿ゴールデン街でバーテンのアルバイトをしていた。上京したきっかけは、当時のお笑い芸人・内藤陳にあこがれていたからである。トリオ・ザ・パンチの内藤陳は亡くなって久しいが、「ハードボイルドだど」というフレーズで今も覚えていえる。

 内藤陳は、このゴールデン街で「深夜プラスワン」という飲み屋を経営していた。この小説では斉藤顕として紹介されている。内藤は人使いが荒くほとんどのアルバイトは短期でやめていったが、坂東だけは長く続いた。この店に「本の雑誌」の編集者目黒考二が、同人の推名誠や沢野ひとしらとともに顔を出した。目黒は坂東に「ウチの本に寄稿してみないか」と勧めた。それが、馳星周誕生の始まりだった。

 いずれ、馳星周ファンには見逃せない一冊だった。この本にナベさんとして紹介されている人がいる。私も新宿ゴールデン街にはよく出入りをしていた。この街に「ナベさん」という人が店を開いていた。どうも読んでいると違うような気もするが、そのナベさんじゃないだろうね。

【12月8日の歩行記録】9,046歩 6.1km

【12月八日のアクセス数】197アクセス 訪問者109人

 

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2020年12月 6日 (日)

№4731 「鬼滅の刃」最終23巻発売

Photo_20201206100701  コミック『鬼滅の刃』の最終巻である第23巻が発売になった。私はコミックファンではないが、やはり話題の本には興味がある。『鬼滅の刃』は「少年ジャンプ」に連載されていたが、今年の5月には完結していた。そして、単行本として第23巻が発売された。印刷部数が395万部というからすごい。

 コミックファンではなくとも、この本を買う読者が書店に行くのは嬉しい。コロナ禍で、どういう商売もそうだが、小売書店の客離れが深刻、という報道がなされている。書店の経営も深刻で、次々と閉店しているという。それだけに、ベストセラーの発売は明るい話題である。

 『鬼滅の刃』第23巻は480円である。余計なことかもしれないが、初版395万部印刷とすると本体総計で19億円弱となる。さらに、シリーズ累計で1億2000万部の売り上げというからすごいものだ。書店では、第23巻を求めて長蛇の列だったらしい。何にしろ、客が書店に足を運んでくれるのは嬉しいことである。

 先日、関連でテレビニュースが流れていた。ある書店で、第23巻の発売を記念して関連書を並べてフェアをやっていたが、既刊の第1巻から22巻がほとんど入荷しないのだそうだ。既刊書なしのフェアでそうなのだから、全巻が揃ったらまだまだいけそうである。「コミック恐るべき」だ。

 私も先日見てきたのだが、映画『鬼滅の刃』の入場者数も記録更新しているらしい。『千地千尋の神隠し』に次いで、入場者数が第2位だという。上映期間が短いから、いずれトップになるのは間違いない。

 ただ、映画を観た感想は、荒唐無稽なものだった。コミックだから当たり前としても、私にとっては『天気の子』のようなほのぼのとした映画がいい。既刊書も読みたいとは思わない。

【12月5日の歩行記録】10,319歩 6.9㎞

【12月5日のアクセス数】148アクセス 訪問者106人

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