カテゴリー「読書日誌」の110件の記事

2020年9月10日 (木)

№5144 8月に読んだ本

Dscn2393  6月中旬から読み始めた逢坂剛の小説は、8月末まで読み続いた。こうやって一人の作家を追い続ける読書も、なかなか良いものだ。2ヶ月半にわたる読んだ逢坂剛の本は、結局、36冊16,552頁に及んだ。普通一人の作家を追い続けていると飽きるものだが、逢坂剛には飽きるということはなかった。

 前にも言ったが、逢坂剛には様々なシリーズがある。「禿鷹シリーズ」「百舌シリーズ」「イベリアシリーズ」「岡坂神策シリーズ」、それに時代小説だ。今回集中的に読んだのは、前の3つのシリーズだ。そして8月の読んだのは、「イベリアシリーズ」である。「イベリアシリーズ」は全7冊、文庫本にして12冊あった。

 今回は逢坂剛を徹底的の読もうと思って、欠本についてはAmazonの古本に頼って取り寄せた。Amazonで買った逢坂剛の文庫は計10冊に及ぶ。結局、8月は逢坂剛の本ばかり、14冊・6374頁の読了だった。

 それでは何を読んだのか書名を書いて、そのなかでも「イベリアシリーズ」について述べたい。書名の後に出版社名がないのは、すべて講談社文庫である。

逢坂剛『牙をむく都会(上)(下)』(上)440頁(下)432頁 2006年3月刊

逢坂剛『斜影はるかな国』759頁 1994年7月刊

逢坂剛『燃える蜃気楼(上)(下)』(上)489頁(下)433頁 2006年9月刊

逢坂剛『遠ざかる祖国(上)(下)』(上)400頁(下)448頁 2005年7月刊

逢坂剛『暗殺者の森(上)(下)』(上)345頁(下)323頁 2003年9月刊

逢坂剛『イベリアの雷鳴]715頁 2002年6月刊

逢坂剛『相棒に気をつけろ』334頁 集英社文庫 2015年9月刊

逢坂剛『相棒に手を出すな』398頁 集英社文庫 2015年10月刊

逢坂剛『さらばスペインの日日(上)(下)』(上)445頁(下)413頁 2016年9月刊

Dscn2394  「イベリア」はスペインのことである。このシリーズは、スペインを巡る第二次世界大戦のスパイ合戦を書いた小説であった。第二次世界大戦には、フランコは中立を持って臨んだ。それだけに、スペイン国内にはイギリス、ドイツ、ロシア、アメリカのスパイがうようよといた。このシリーズの主人公北都昭平は国籍こそペルーだったが、裏を返せば日本のスパイだった。もう一人の主人公ヴァジニア・クレイトンはイギリスのG6に属するスパイだった。

 この二人のスパイ合戦と恋心を通して、第二次大戦の裏側を描いていった小説だ。第二次大戦がはじまる当初、スペインは国内の市民戦争で傷ついていた。結局は反革命派のフランコが権力を握ったのだが、それにはヒトラーの援助が必要だった。ヒトラーは、当然スペインはドイツ側に付くものと期待していた。ところが、フランコはどちらに着くともはっきり判断しない。

 もう一つが、スペイン国内にあるイギリスの土地・ジブラルタルを巡る攻防があった。ジブラルタル海峡は、チャイセイヨウから地中海への入口に当たる狭い海峡だ。軍事上、海上交通上の重要拠点として、18世紀以来イギリスが占領している。ヒトラーは、このジブラルタルが欲しかった。

 本人も言っているが、第二次世界大戦を日本抜きで描いた日本の作家は初めてではないか。舞台はあくまでもスペインだ。アフリカを巡る謀略、イタリア上陸地点をめぐる謀略、そして最大の謀略は、連合軍はフランスのどこに上陸するかという謀略だった。結局はノルマンディーに上陸したのだが、ドイツは最後まで絞り切れなかった。

 ヨーロッパ戦線を巡る壮大なスペクタクルである。逢坂剛はこの小説に約15年、原稿用紙にして8000枚を費やして書き上げた。いまの小説家でこれほどの労作をものにできる作家はいるだろうか。あらためて逢坂剛の偉大さを知った。ただ物足りなかったのは、最後の『さらばスペインの日々』で、このシリーズが竜頭蛇尾に終わったことだ。

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2020年8月 7日 (金)

№5110 7月に読んだ本

 毎月の月初に報告する「7月に読んだ本」の記事だ。ブログをやっていると、読者に恥ずかしい思いをさせてはいけないと、日々緊張した生活を送っている。この読んだ本の報告をする「読書日誌」などもその一つだ。

 毎月話しているのだが、この3月に図書館は閉館になり、それまで利用していた図書館の本が借りられなくなった。困って目につけたのが、今まですでに読んだ本棚の本だ。20~30年前の本が中心だが、これが面白い。次々と読み進むうちに出合ったのが【逢坂剛】である。改めて読んでいるうちに、本棚の本だけでは間に合わなくなった。先日も報告したが、Amazonの古本で逢坂剛を買い求めている。

 6月16日に読み始めた逢坂剛の小説は、今まで25冊になった。さらにこれから読もうとしている逢坂剛は12冊も待機している。6月に読んだ逢坂剛のシリーズは「百舌」であり、中に「岡坂神策シリーズ」が紛れ込んでいる。7月に読んだのが「禿鷹シリーズ」で、それが終わって今取り組んでいるのが「イベリアシリーズ」だ。改めて読んでみると、逢坂剛は多作な作家だと分かる。

 7月もすべてが逢坂剛であった。彼は博報堂のサラリーマンを辞めて作家生活に入った。彼が勤めている頃の博報堂は、神保町の側にあった。彼の作品にはしばしば神保町の話が出てくるが、神保町はまた私がサラリーマン生活を送ったところでもある。逢坂剛に親近感がわく由縁だ。さて7月は逢坂剛月間で15冊・6574頁の本を読了した。これも新記録である。

 さて、それでは例月のように何を読んだのか報告をして、2~3の感想を述べたい。

逢坂剛『無防備都市 禿鷹の夜Ⅱ』414頁 文藝春秋 2002年1月刊

逢坂剛『銀弾の森 禿鷹の夜Ⅲ』363頁 文藝春秋 2003年11月刊

逢坂剛『禿鷹狩り 禿鷹Ⅳ』524頁 文藝春秋 2006年7月刊

逢坂剛『凶弾 禿鷹Ⅴ』606頁 文春文庫 2006年7月刊

逢坂剛『百舌落とし』474頁 集英社 2019年8月刊

逢坂剛『カディスの赤い星(上)』389頁 講談社文庫 1989年8月刊

逢坂剛『カディスの赤い星(下)』441頁 講談社文庫 1989年8月刊

逢坂剛『コルドバの女豹』356頁 講談社文庫 1986年9月刊

逢坂剛『十字路に立つ女』397頁 講談社文庫 1992年5月刊

逢坂剛『ハポン追跡』359頁 講談社文庫 1995年10月刊

逢坂剛『幻の祭典』743頁 徳間文庫 2010年10月刊

逢坂剛『暗い国境線(上)』417頁 講談社文庫 2008年12月刊

逢坂剛『暗い国境線(下)』394頁 講談社文庫 2008年12月刊

逢坂剛『鎖された海峡』697頁 講談社文庫 2011年4月刊

Photo_20200806112401  先ほども報告したが、7月に読んだ逢坂剛で何より印象に残ったのが「禿鷹シリーズ」の5冊だ。このシリーズの主人公禿富鷹秋(とくとみたかあき)は、神宮署の刑事である。彼の名前をとって通称「禿鷹(はげたか)」と呼ばれている悪徳刑事の話だ。この禿鷹はろくでもない刑事で、渋谷で暴力団のかすりをとったり、殺し屋を逆に殺してしまったり、やくざの情婦を犯したりとやりたい放題だった。神宮署も、彼の行動には目をつぶっていた。

 その禿鷹が、第4巻の『禿鷹狩り』で殺されてしまう。普通、主人公が殺されると物語は終わりだが、第5巻『凶弾』では今まで物語に登場しない別れた女房が出てきて、その女房が中心の話に仕立ててしまった。逢坂剛の剛腕物語である。

Photo_20200806114101    もう一つ、逢坂剛にとって記念碑となる作品が『カディスの赤い星』だ。逢坂剛は、1980年に作家デビューを果たした。処女作は『暗殺者グラナダに死す』だったが、それが発表になった時点ですでに『カディスの赤い星』は書かれていた。あまりの長編に、発表をためらったらしい。ようやく発表したのが1986年というから、この作品ができて9年後という。

 逢坂剛は、博報堂時代から休暇のほぼすべてを使ってスペイン旅行をしていたらしい。その当時のめりこんでいたのはフラメンコギターとスペイン内戦についてだった。この小説には、逢坂剛のそれまでのすべてが含まれている。

 逢坂剛は当時を回想して、「素人が書いた小説1500枚は、編集者の誰にも読まれなかった。持ち込み原稿としてはあまりにも長大過ぎたのだ。そこで発想を転換して、プロの作家になろうと決意した」記念碑的作品である。スペインを舞台にした小説など、誰にも相手にされなかったらしい。それが、今では逢坂剛とスペインは切っても切り離さない舞台となっている。

 いま読んでいる「イベリアシリーズ」は来月の課題となる。

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2020年7月 9日 (木)

№5081 6月に読んだ本

 「自粛」が叫ばれる中、この期間に格好な過ごし方が読書である。もっとも、私は叫ばれる以前から自粛生活をしているようなものだ。この間、仲間はどういう生活を送っているのかは知らないが、私には退屈することがない。静かに本を読む生活は続いている。引退後のこのような生活に、私は本当に満足している。

 以前にもお話ししたと思うが、本を読むという行為は忍耐との戦いだ。しかも習慣でもある。忍耐と習慣を身につけたものだけが、この読書生活を送ることができる。どうだろうか、本を読み始めたのは極めて若いころからである。読み始めてから、少なくても50年にはなるのではないだろうか。この習慣の中で、私の周りに本がない生活は考えられない。

 さて、新型コロナウィルスの騒ぎで、私が絶えず通っていた市の図書館が、3月上旬に閉鎖になった。どうしようか考えたのだが、そうだ自宅には読み終わった大量の本が残されている。その本の再読をしようと、はじめてもう4か月になる。読み始めた分かったのだが、もう20年以上も前に読んだ本の内容はほとんど覚えていない。まるで新刊を読んでいるような気分である。

 本の山を切り崩してみると、私が好きで買った本だから当然であるが、まるで宝の山のように魅力ある本を次々と再発見された。そして、次々と読みこなしている。シリーズの本は文庫でどこかに眠っているのだろうが、それは探さない。近くにBOOKOFFがあるので、そこで買ってきてしまう。6月から7月にかけて集中的に読んでいるのは、逢坂剛の小説だ。

 私は逢坂剛が好きで、随分彼の本を読んできた。しかし、改めて集中的読んでみると、彼は息の長い作家であると分かる。そのことは、感想の中で書くとして、6月は14冊・6071頁の本を読了した。私は一日200頁の本を読みたいと思っているのだが、6月はその目標を達成した。6000頁超えの本を読むのは、これまでも年に1~2回だった。

 前置きはこれくらいにして、具体的に何を読んだのかを記し、今月は逢坂剛について触れてみたい。

梁石日『死は炎のごとく』405頁 毎日新聞社 2001年1月刊

横山秀夫『震度0』410頁 朝日新聞社 2005年7月刊

佐々木譲『警官の血(上)』397頁 新潮社 2007年9月刊

佐々木譲『警官の血(下)』381頁 新潮社 2007年9月刊

宮尾登美子『春燈』451頁 新潮社 1989年1月刊

高杉良『金融腐蝕列島』423頁 角川書店 1998年5月刊

逢坂剛『よみがえる百舌』557頁 集英社 1996年11月刊

逢坂剛『百舌の叫ぶ夜』449頁 集英社文庫 1990年7月刊

逢坂剛『幻の翼』404頁 集英社文庫 1995年3月刊

逢坂剛『砕かれた鍵』478頁 集英社文庫 1990年8月刊

逢坂剛『裏切りの日日』273頁 集英社文庫 1986年7月刊

逢坂剛『鵟の巣』580頁 集英社文庫 2005年4月刊

逢坂剛『墓標なき街』506頁 集英社文庫 2018年2月刊

逢坂剛『禿鷹の夜』357頁 2000年5月刊

Img202007061051522  「百舌」シリーズを読み始めたのは、蔵書の中から『よみがえる百舌』が最初だった。面白いのは勿論だったが、この本は「百舌シリーズ」(全8巻)の5冊目だと分かった。それではと、このシリーズを読み始めたら止まらない。全部で3,247頁あるシリーズを全部読んでしまった。

Img202007061053331  このシリーズの第一巻は『裏切りの日々』で、以降②『百舌の叫ぶ夜』、③『幻の翼』、④『砕かれた鍵』、⑤『よみがえる百舌』、⑥『鵟の巣』、⑦『墓標なき街』と続く。第一巻が刊行されたのが、1981年だ。39年前になる。

Img202007061054041  このシリーズは、殺し屋百舌の話だ。百舌が殺した後には百舌の羽が落ちていた。面白いことに、このシリーズで百舌が出てくるのはわづか3巻だ。後は周辺の話であるが、それでも夢中で読んだ。後に検索してみると、この「百舌シリーズ」に昨年8月、完結編として『百舌落とし』が加わった。大宮でこの本も買ってきた。読むのはこれからである。

 逢坂剛には、これ以外にもたくさんのシリーズがある。そしていま読んでいるのが「禿鷹(はげたか)」シリーズだ。このシリーズは全部で5冊あり、トータルで2250頁の大作だ。これももうすぐに読み終わる。

 私が逢坂剛というときに、イメージするのは「イベリアシリーズ」というか、スペイン物の小説だ。検索してみたら、このシリーズはもう20数年前に文庫で読んでいた。これを探してきて、次のターゲットにしよう。逢坂剛には「岡坂神策シリーズ」などもあり、まだまだ逢坂月間は続きそうだ。

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2020年6月 9日 (火)

№5051 5月に読んだ本

 毎月の月初に前月読んだ本の報告をし、若干の感想を述べている。

 これまでは、読む本のほとんどを市の図書館に依存していた。ところが今回の新型コロナウィルス騒ぎで、市の図書館は3月上旬に閉館してしまった。困った私は、自宅にある在庫の本を手に取った。ほとんどが20年以上も前の本だ。私は頭が悪いというのか、以前読んだはずの内容をほとんど覚えていなかった。全くの新刊と同じだ。

 それから3ヶ月経つが、自宅の隅に転がっている本を探しては読み続けている。読んでいる本はほとんどが厚くて、読み応えのあるものだ。結構二段組の本も多かった。そしていまでは、自宅が本の再発見の場になっている。そして、こんな本もあんな本も読んでいたんだなと、感慨にふけることが多い。

 今回の新型コロナウィルス騒ぎで自粛を呼びかけられていたが、当然のように私には無縁だった。探し出してきては読む日の連続だ。そして、5月は12冊・5638頁を読了した。なかなか目標の6000頁とはいかないが、それでもいい水準だったのではないか。

 それでは例月にように、何を読んだのか報告し、若干の本の感想を述べたい。

三浦しをん『風が吹いている』508頁 新潮社 2006年9月刊

飯島和一『黄金旅風』485頁 小学館 2004年4月刊

楡周平『クラッシュ』605頁 宝島社 1998年12月刊

梁石日『血と骨』513頁 幻冬舎 1998年2月刊

東野圭吾『白夜行』506頁 集英社 1998年8月刊

楡周平『ターゲット』508頁 宝島社 1999年11月刊

工藤美代子『快楽』280頁 中央公論新社 2006年3月刊

逢坂剛『メディア決闘録ファイル』251頁 小学館 2000年4月刊

佐々木譲『昭南島に蘭ありや』477頁 中央公論 1995年8月刊

飯島和一『始祖鳥記』397頁 小学館 2000年2月刊

大沢在昌『欧亜純白Ⅰ・Ⅱ』Ⅰ565頁 Ⅱ541頁 集英社 2009年12月刊

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 梁石日(やん・そぎる)さんの原点というべき作品である。主人公金俊平は、多分父親のことであろう。その父親のとんでもない人生を描いた作品である。父親金俊平は、戦争中、済州島から日本にやってきて、大阪に住み込んだ。蒲鉾職人であった。ただ、まじめな職人というよりも、しょっちゅう仕事をさぼって酒ばかり飲んでいる。

 巨漢で力があり、狂暴、絶倫、酒豪、博徒、吝嗇、猜疑心の塊のような男だ。梁石日は、この父親を冷静に観察し、父親の暴力から家族を守った。この小説を読みながら、こんな男もいるんだと驚き呆れてしまった。彼は、ある時蒲鉾工場が売りに出されたのを知った。とはいっても金はない。奥さんが金を作り工場を買った。その蒲鉾工場が大当たりした。金俊平にドンドン金が入ってくる。ただ、その金は一銭も家族には渡さなかった。

 家族は貧乏のどん底で苦しんでいた。戦後まもなくだろう、奥さんは金を稼ぐために闇商売に手を染めた。そして、辛うじて家族の生計が成り立って行った。この父親の行状にあきれながらも読ませるのが、この小説に力技ではなかったか。

 好き放題にしていた俊平だが、周りの誰からも相手にされず、次第に孤独をかこった。最後に一人で北朝鮮に渡って行ったが、その後のことは誰にも分らなかった。ものすごく印象に残る作品だが、2004年、ビートたけし主演で映画化された。ずいぶん話題になったようだが、私は見ていない。この作品がきっかけで、私は梁石日の作品はほとんど読んだ。

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 大沢在昌も私の好きな作家の一人だ。彼は多作な作家だが、私はほとんど彼の作品は読んでいるのじゃないかな。特に「新宿鮫」シリーズは、胸を高鳴らせて次々と読んでいった記憶がある。今調べてみると1990年ころの話だ。よくもあれだけ人殺しをやるものと、あきれながら読んだ記憶がある。この作品は、(Ⅰ)と(Ⅱ)を合わせて1100頁に及ぶ大作だった。私にとっては、このような大作を読むのに苦労しない。

 今回のテーマは麻薬である。その内容のスケールも、ユーラシア大陸と名前を付けるほど大きい。麻薬は、罌粟の花から作る。その罌粟の産地は、黄金の三角地帯といわれるタイ・ミャンマー・ラオスの国境地帯で栽培されている。もう一つの一大産地が、黄金の三日月地帯といわれているアフガニスタンの国境地帯だ。

 この麻薬の流通ルートは複雑だ。今回の小説は、中国から日本を経由して、最大の消費地アメリカまでのルートを作り上げようとうごめく闇について描かれている。その陰に「ホワイトタイガー」がいるが、その実態は誰にも分らない。この小説を読んでも、結局は「ホワイトタイガー」は闇に包まれていた。

 麻薬ビジネスについて、この小説を読んでわかったのだろうか疑問だ。ただ、読ませてくれた。

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2020年5月 9日 (土)

№5021 4月に読んだ本

 私の読書計画は、市の図書館に負うところが大きい。今までは、ほとんど、本を図書館で借りて読んでいた。メリットは、一度に2週間、10冊まで借りられるのだが、借りた本を2週間で読もうと努力することにある。締切日に追われるように読書を進める。結果は、最低限月5000頁の読了ができている。

 それが大きく変わったのがコロナウィルス騒ぎである。3月上旬に図書館に行ったら、「今月いっぱい閉館です」の張り紙があった。想定していないことだった。それが4月に入っても5月に入っても閉館の状態は続いていた。ウ~~ム、困ったね。ただ、わが家にはたくさんの蔵書がある。今まで本棚の肥やしになっていたのだが、これを機会に蔵書の見直しをした。

 多分、ほとんど読んでしまった本のはずだが、読み直してみると内容はほとんど覚えてない。まるで新刊感覚で読めた。奥付をみると、1900年代の末から2000年代初めにかけての本だ。ただ、わが本棚はきちんと整理されているわけではない。空いているスペースに本を突っ込んだ状態である。以前もそうだったが、本を探すなら買った方が早いと同じ本が2冊も3冊もある。本棚を買って本を収めても、すぐに一杯になると、その内に本棚も買うのをやめた。本が自宅のあちこちに点在する始末だ。

 女房に「本など捨ててしまいなさいよ」と常々言われている。ところがいざ捨てるとなると、これができない。今回の騒ぎで再度在庫を見直してみて、矢張り本は捨てないで良かったとつくづく思った。さて、4月は13冊・5617頁を読了した。ほとんどが自宅にあった本であった。毎月のように、何を読んだのか報告をし、その中で印象に残った本の紹介をしたい。

楡周平『青狼記』471頁 講談社 2000年7月刊

帚木蓬生『安楽病棟』462頁 新潮社 1999年4月刊

春江一也『ベルリンの秋(上)(下)』(上)455頁(下)485頁 集英社 1999年6月刊

湖島克弘『阿片試食官』365頁 徳間書店 1999年1月刊

大沢在昌『天使の爪(上)(下)』(上)463頁(下)456頁 光文社 2005年6月刊

桐野夏生『柔らかな頬』365頁 講談社 1999年4月刊

浅田次郎『壬生義士伝(上)(下)』(上)390頁(下)373頁

馳星周『鎮魂歌 不夜城Ⅱ』330頁 角川書店 1998年8月刊

西木正明『養安先生、呼ばれ』486頁 恒文社 2003年10月刊

春江一也『ウィーンの冬』516頁 集英社 5005年11月刊

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 以前は西木正明の本をよく読んでいたが、最近はとんとご無沙汰している。新刊活動をしているのだろうか。西木正明といっても知らない人が多いかもしれないが、秋田県出身の作家である。私は行ったことがないが、どうやら西木村出身とのことだ。今回の本も、秋田県の院内銀山が舞台であった。

 多分この本を読んだせいかしら、帰郷の折り、一度院内銀山に行ってみた。もう10数年も前のことである。いろいろな鉱山が観光化されている中、この院内銀山は坑道が閉鎖されていて、ひっそりしていた。かつての賑わいは、どこにも見られなかった。

 この小説は、江戸末期のの話である。世の中は飢饉でどんどん人が亡くなっていたが、この銀山では白いご飯が食べられていた。当時は、この院内銀山と兵庫県の生野銀山が最盛期だったらしい。食い詰めた人たちがこの院内銀山に押し寄せ、活況を呈していた。この院内銀山で唯一の医者が、門屋養安である。彼の活躍を書いた小説だった。

 当時は肺病(結核)で亡くなった人が多かったが、この銀山では「よろけ」(珪肺)で亡くなる人が多かった。構内で塵灰を吸い、30数歳の働き盛りで亡くなって行った。養安先生は、このよろけを無くそうと努力したが、当時の医学ではどうもできなかったようだ。それと、痘瘡を無くそうと奮闘した。痘瘡も、当時の特に子どもにとっての死病だった。

 酒の好きだった養安先生だが、どんなに酔っていても頼まれると病床に駆け付けた。この小説は、「養安先生没後130年記念出版」だった。

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 この本も1999年に読んでいるから、もう20年にもなる。作家の春江一也は、外務省の外交官出身だった。こういう話が好きで、私は春江の本をよく読んだ。ただ今どうしているのか、久し振りに「春江」を検索してみたら、すでに2014年に亡くなっていた。人はどんどん死ぬものだ、と改めて感慨がわいた。

 この小説には前段があり、『プラハの春(上)(下)』という小説があった。たしか自宅にあるはずと探してみたが、見つからなかった。これも含めての三部作だ。『プラハの春』では、チェコ大使館に勤めていた主人公堀江亮介が、カテリーナ・グレーベという女性と大恋愛する話だった。当時のチェコの状況も含めて、夢中で読んだ記憶がある。カテリーナは、「暗殺」という悲惨な最期を遂げた

 そして今回の『ベルリンの秋』は、堀江が次に赴任になったベルリンでの話だ。当時は西と東に「ベルリンの壁」があり、隔てられていた。そこで不思議な出会いがあった。カテリーナの一人娘、シルビア・シュナイダーとの出合いだ。堀江はシルビアをカテリーナの忘れ形見として認識していたが、シルビアは堀江を恋愛の対象として見ていた。

 堀江の時代認識も面白かった。まだロシアの共産体制が確固としている中、この体制は長くは続かないと読み切っていた。様々なレポートも書いたし、外務省の中でも「ソヴィエトの崩壊」を口外した。恋愛小説が好きな私は、堀江とシルビアの関係がどうなるのか興味深く読んだ。局、行き違いでシルビアは他の男の子どもを産んだ。生まれた子供を堀江は認知した。

 『ウィーンの冬』は、堀江がアフリカ外交官を経て本省に帰り、特別の任務を帯び外務省をやめた話だ。オーストリアのウィーンで、東西のころが、生まれ故郷ではシルビアが死の床に伏してしていた。すぐ飛んで会いに行けるのに、仕事でママにならない堀江にイライラを募らせながら読んだ。

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2020年4月10日 (金)

№4992 3月に読んだ本

 すべてのスケジュールがキャンセルになり、人と会うことも制限されてみると、残るのは本を読むことだけだ。とはいっても、読書に慣れていないものに簡単に「本を読むように」促されても、そういうわけにはいかない。本当に「読書は習慣」である。私は本を読む習慣を身につけている。というよりも、本を読むことしかやることがないと、肯定的に現状を受け止めている。

 有り余る時間を読書に傾けるのは、まことに至福の時間だ。朝に読み、昼に読み、夜の寝る前、夜中に目が覚めては本を読んでいる。どうだろうか、時間に直すと1日4~5時間は読んでいるのではないか。それならもっと読めそうなものだが、長く読んでいると飽きてくるのはしようがない。1日200頁は読みたいという目標はおろしていない。しかし、1か月で均してみると、1日当たり170~180頁というのが実情だ。

 3月は本当に参った。私の読む本は、ほとんどが市の図書館で借りてくるものばかりだ。ところが3月上旬、何の予告もなく突然図書館が閉館した。新型コロナウィルスの影響だという。3月いっぱいの閉館というので、4月1日に図書館に行ってみた。そしたら延長して4月いっぱいは閉館だとのことだ。さて困ったね。

 このところほとんど見向きもしなかった本棚に眼をやった。数えたことはないが、わが家には5000~6000冊の本はあるはずだ。仕方がないので、これはという本を本棚から見繕って読んでいる始末だ。奥付の発行日をみると、1900年代後半から2000年代初頭にかけての本ばかりだ。ところが、もう20年以上前に読んだはずの本が、新鮮だった。このところ、本棚から引っ張り出した本ばかりを読んでいる。さて、3月は13冊・5,890頁の読了だった。例月に比べて500頁ほど余分に読んだことになる。

 それでは何を読んだのか報告し、2~3の本の感想を述べたい。

藤崎慎吾『鯨の王』476頁 文藝春秋 2007年5月刊

樋口明雄『天空の犬』356頁 徳間書店 2012年8月刊

ヒキタクニオ『アムステルダムの日本晴れ』395頁 新潮社 2005年5月刊

藤田宜永『異端の夏』466頁 講談社 2003年1月刊

湊かなえ『山女日記』292頁 幻冬舎 2014年7月刊

安部龍太郎『十三の海鳴り 蝦夷太平記』485頁 集英社 2019年10月刊

梁石日『魂の痕』270頁 河出書房新社 2020年1月刊

馳星周『不夜城』299頁 角川書店 1997年8月刊

佐々木譲『勇士は還らず』540頁 朝日新聞文庫 1997年11月刊

池澤夏樹『マシアス・ギリの失脚』535頁 新潮社 1993年6月刊

船戸与一『蝦夷地別件(上)(下)』(上)573頁(下)608頁 新潮社 1995年5月刊

帚木蓬生『薔薇窓』595頁 新潮社 2001年6月刊

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 私は不覚にして藤田宜永が亡くなったことは知らなかった。図書館で「藤田宜永を偲ぶ」コーナーができていて、はじめて藤田が亡くなったのを知った。私は藤田の本はずいぶん読んできた。彼は探偵小説も書いていたが、基本的には恋愛小説の作家だ。あらためて、今まで藤田の本を何冊読んできたのか検索してみた。なんと47冊も読んでいた。

 そして分かったのだが、『異端の夏』も今まで3回も読んでいた。2004年7月、2010年9月とこの2020年3月である。最近、同じ本は何度読んでもいいと割り切ることにしているが、それにしても読み終わるまで以前読んでいたことに気が付かなかった。

 藤田宜永は、1月30日に亡くなった。私より5歳も年下だ。私は藤田の小説も好きだったが、奥さんの小池真理子の小説も好きでよく読んでいる。藤田の小説も小池の小説もあらかた読んでしまった。藤田の新作を読むのを楽しみにしていたのだが、それも叶わないことになってしまった。藤田はものすごいヘビースモーカーだったらしい。肺には大きな穴が開いていたという。

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 船戸与一も亡くなって5年になる。私は彼の長編小説が大好きだった。今回の『蝦夷地別件』も2007年から8年にかけてすでに読んでいた。図書館閉館に伴い、再度読んでみようと本棚から引っ張り出した。この本も大作で上下合わせて1180頁あまりあった。しかも本文は2段組だったから、1段組の本に比べて2割方多かったのではないか。前回は10日間をかけて読んだが、今回も読了まで6日かかった。

 いつも大作を読むたびに思うのだが、作家が何年もかけて書いた小説をわずか4~5日で読んでしまい、申し訳なく思っている。そして、読者になっても小説家になどなるべきではないとつくづく思ってしまう。まあ、小説など書けないのだが、圧倒的に読者が有利だね。

 あらためて船戸の読んだ本をリストアップしてみた。42冊ほどを読んでいる。リストアップするたびに、2回3回と読んだ本が出てくるのは驚きだ。再読三読を情けなく思うわけではないが、読み終わってもそのことに気が付かないのが情けないね。

 『蝦夷地別件』を読んで改めて思ったのだが、アイヌの人たちがいかに和人(しゃも)に虐げられていたのか、悲惨なほどだった。よくぞここまで調べて書けたものと、船戸の筆力に感嘆した。

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 安部龍太郎は歴史小説家として大好きで、彼の新作を楽しみに待っている。『十三の海鳴り 蝦夷太平記』は昨年の10月に出た新刊である。安部は、ほとんどが歴史に名の売れた主人公を描く。信長、家康、等伯、宗麟、楠木正成などである。

 このタイトルを読んで、津軽の話だと分かった。十三湖は、昨年の津軽の旅で訪れた。今回の小説は、この地が舞台だった。時代は鎌倉末期から南北朝にかけての話だ。幕府と天皇方の権力闘争が、この津軽の地にも影響があった。親族が幕府と天皇方に分かれて争いが激化していた。

 この小説だけではないが、当時の日本の主要な交通路は陸路ではなく、日本海を中心とした海路で発達していたことがよくわかる。歴史小説には夢があるね。

【4月9日の歩行記録】654歩 438m

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2020年3月18日 (水)

№4469 「電車読書」の新たな方向

 新型コロナウィルスの影響で、ほとんどのスケジュールがキャンセルになっている。何の行事もないと、このブログも記事を書くのに困ってしまう。この日は、昨日の私の行動を書きたい。

 スケジュールがキャンセルになっても、毎日一定程度は歩くようにしている。朝、さて今日はどこに行こうかと考える。歩行距離と昼食と読書に満足できるのが、隣駅の東大宮駅まで歩くことだ。隣駅までは約6500歩、4.5㎞である。前にもお話ししたが、駅前にお気に入りのラーメン屋がある。今日もお気に入りのコースを歩くことにした。

 行き付けのラーメン屋は、すっかり顔馴染みになってしまった。常連客には特別にトッピングがつく。私がいつも頼むのは、モヤシの増量サービスである。ラーメンの盛も普通注文で盛りが多く、一杯食べるとお腹いっぱいになる。

 さて、東大宮駅から電車に乗る。以前は下りに乗り、宇都宮まで行っていた。そうだと思い、上り電車に乗ってみた。宇都宮線は、上りの行き先は小田原か熱海である。上り電車で片道100頁読む駅まで行こう。ちょうど平塚駅まで行くと100頁になる。帰りも100頁読め、都合200頁読んでしまう。しかも、電車読書は安くて、読書に集中できる。

 正確にいうと違法なのだろうが、約2時間半電車に乗り、電車賃は180円くらいと安い。お気に入りの喫茶店で本を読むと、せいぜい1時間半程度で尻がもぞもぞしてくる。しかも500円から600円のお茶代がいる。別にコーヒーを飲みたいわけでもないので、喫茶店に入るなら電車に乗っているのが気楽だ。ラーメン代と電車賃で、一日1000円で済むのがいいね。

 この日も平塚往復をしてきた。目標の200頁読了だった。このおかげで、今月は読書がえらくはかどっている。家を出てから帰って来るのが遅かったので、女房が「どこに行ってきたの」と聞いてきた。電車で平塚まで行ってきたと話したら、呆れていた。

【3月17日の歩行記録】5,244歩 3.5km

 

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2020年3月14日 (土)

№4465 こんなところまでコロナの影響が

 図書館に行ってきた。前回借りた10冊の本を読み終えたので返却をし、新たにまた10冊借りるつもりでいた。さてどんな本を借りられるのか、毎度のことながらワクワクしながら歩いて行った。ところが図書館は閉館だった。コロナウィルスの影響で、今月いっぱい閉めるのだそうだ。エッ、聞いていないよ。今回借りた本はすべて読んでしまった、さてどうしよう。とりあえず、図書館には本を返してきた。

Photo_20200314114901  まあ、自宅の在庫本を再読するか。なるべく厚めの本を5冊ほど本棚から引っこ抜いた。ところで、引っこ抜いた本はいつ読んだのか検索してみた。今日はその報告をしたい。私の本棚にある小説は、そのほとんどが一度読んだきりのものが多い。私の「読書ノート」は、1991年から30年間にわたる3487冊のリストになっている。2000年ころからは今のスタイルになったが、当初は読んだ本のリストだけで読了日の記録がない。

 まず、先日感銘を受けた馳星周の処女作『不夜城』を取り出した。果たしていつ読んだのか検索してみた。まだリストが完備していない1997年ころに読んだ本のようだ。奥付の日付は、平成八年九月三十日となっていた。私の好きな馳星周の処女作をもう一度再読してみよう。

 さらに取り出したのが、船戸与一の『蝦夷地別件(上)(下)』だ。この本は2段組で、上下合わせて1120頁もある大作だ。これも前に完読したはずだが、果たしていつのことだろうか。やはり検索してみたら、2007年12月から2008年1月にかけて読んでいた。船戸与一は、惜しいかな2015年4月に亡くなった。私より2歳年上だったので、結構若くして亡くなったのだ。彼の処女作『砂の上のクロニクル』もどこかにあるはずだが、これは探すのが大変なのでやめた。船戸の畢生の名作「満州国演義(全9巻)」もいずれ再読してみたい。

 池澤夏樹も私の大好きな作家だ。久し振りに読んでみようと取り出したのが『マシアス・ギリの失脚』だ。この本も535頁の大作だ。奥付は1993年6月となっていたが、読んだのは2006年7月となっている。しばらく本棚に眠っていたのだろうか。池澤夏樹の本で今でも忘れられないのが『静かな大地』だ。この本も、「読書ノート」を検索すると、どこかの本棚に眠っているようだ。

 佐々木譲の『勇士は還らず』も目に付いて、本棚から取り出した。どうしても取り出すのは、私の好きな作家だね。1997年11月の奥付があるから、23年前に読んでいるのだろう。もちろん、内容は覚えていない。佐々木譲の本もたくさん読んだが、なんといっても面白かったのが、第2次大戦三部作というべき『エトロフ発緊急(ウナ)電』だったね。この本を検索してみたが、リストにはなかった。ということは1991年以前に読んだのだろうか。自宅のどこかにあるはずだ。

Sdscn2019  図書館休館で、思わぬ本棚探しが楽しかった。

【3月13日の歩行記録】5,253歩 3.5km

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2020年3月10日 (火)

№4461 2月に読んだ本

 毎月読んだ本の報告をするこの記事は、このブログ始めて以来の習慣だ。もう12年にもなるが、この報告は欠かしたことがない。今日も2月に読んだ本の報告をしたい。

 2月は、毎年緊張して迎える。というのも、例月に比べて短いからだ。今年は閏年で一日多かったが、それでも短い。一日150頁~200頁読んでいるものにとって、その一日が大切だ。例えば2日短いとすると、300~400頁例月より読書時間が短い。最近、私の読書は最低目標の月5000頁読了をぎりぎりでクリアしているので、今年は月が改まってから読書スピードを上げた。結果は、14冊・5498頁の本が読めた。目標クリアである。

 老人の暇な時間を送っているものにとって、読書は何よりの楽しみである。老婆心ながら、読書をしない老人は毎日何の楽しみをもって普段の生活を送っているのだろうか。ともあれ、周りに本があると精神が安定するから不思議なものだ。本はどんどん飛ばして読んでいるので、読んだそばから忘れていく。まあ、それでもいいかなと思いながらの読書生活だ。

 2月はこういうエピソードもあった。遊びに来ていた孫のRukaが、「ジジ、何か面白い本はないの」という。最近読書にはまったらしい。うん、いい傾向だ。自宅にはいくらでも本があるので好きなものを持っていくようにと、本棚に案内した。なんやら10冊ばかり選んでいたようだ。そうだ、私のとっておきの本を貸そうと取り出したのが、沢木耕太郎『深夜特急』三部作だ。他の本はあげるが、著者サイン入りの『深夜特急』だけは返すように言っておいた。

 それでは、2月は何を読んだのかを報告し、2~3冊について軽い感想を述べたい。

篠田節子『銀婚式』313頁 毎日新聞社 2011年12月刊

新城カズマ『島津戦記』428頁 新潮社 2014年9月刊

北原亞以子『化土記(けとうき)』365頁 PHP研究所 2014年11月刊

門井慶喜『屋根をかける人』365頁 角川書店 2016年12月刊

熊谷達也『我は景祐』490頁 新潮社 2019年11月刊

佐藤賢一『アメリカ第二次南北戦争』443頁 光文社 2006年8月刊

柴田哲孝『異聞・真珠湾攻撃』467頁 祥伝社 2018年7月刊

古川薫『斜陽に立つ』424頁 毎日新聞社 2008年5月刊

福田和代『迎撃せよ』389頁 角川書店 2009年1月刊

久間十義『デス・エンジェル』291頁 新潮社 2015年10月刊

馳星周『雨降る森の犬』418頁 集英社 2018年6月刊

鳴海風『ラランデの星』392頁 新人物往来社 2006年8月刊

鳥越碧『秘恋 日野富子異聞』357頁 講談社 2014年12月刊

堂場瞬一『十字の記憶』356頁 角川書店 2015年8月刊

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 私は馳星周の本はたくさん読んでいる。その作品のほとんどがノアール小説(暗黒小説)としてである。彼の小説では、簡単に人の殺し合いをやる。実際はそんなことはあり得ないと思いながら、胸湧き躍らせて読む。ノアール小説は、「謀略戦、騙しあい、外国人マフィア、やくざ、不良少年といった暗黒社会の住人が登場人物のメイン」である。馳は、もっぱらそういう小説を書く作家だと思っていた。

 ところが、今回読んだ小説はガラッと変わった話で、馳にこういうテーマがあるのに驚いた。しかも、私にとっては大好きなテーマだった。これだけ小説を読んでいても、寝る間も惜しんで読むものなどそんなにはない。しかし、この小説はそれこそ寝ないで読んだ本だ。読書の楽しみを十分に味わえた。

 内容は、家庭内の葛藤を抱えた中学生の雨音(あまね)という少女と、これも若い後妻とうまく行かない大金持ちの家の高校生の少年正樹が、バーニーズ・マウンテン・ドッグという犬を介して癒されていくという話だ。これに介在していたのが、雨音の山岳写真家の叔父道夫である。彼は基本的にあまり人の生き方に関与せず、あるがままに生きろというスタンスだ。山の生活と、イヌとの共同生活の中で次第に成長する姿が、読むものにほっとさせてくれた。

Sdscn1916 この本のサブタイトルは、「乃木希典と児玉源太郎」である。基本的には、乃木希典が偉大な将軍だったのか、それとも愚将であったのかを検証する小説だった。私は、古川薫という作家の本を読むのは初めてのことだ。この本は、先日那須に行って乃木神社を訪ねたもとになる本だ。

 面白かったのは、司馬遼太郎が彼の小説『殉死』や『坂の上の雲』などで乃木希典を盛んに酷評していた。特に日露戦争の最大の山場、203高地の攻略について、口を極めてその無能ぶりを非難した。司馬のこの小説の影響もあったのか、私の中でも乃木希典がとんでもない凡庸な将軍、という固定観念がある。司馬は、また長州人の無能ぶりを口酸っぱくののしっている。

 古川の小説は、むしろ乃木希典をかばうような話だ。司馬があれだけ乃木を非難するのはかわいそうだ。むしろ非難されるべきは、東京にあった大本営(その当時は大本営とはいっていなかった)の作戦指揮の将軍どもだ、というのである。むしろ現場指揮者としての乃木は、本部の指令に逆らって頑張ったと述べている。まあ、これは歴史の検証に待たざるを得ないね。

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 鳥越碧の本は、目につく限り読んでいる。彼女は、歴史に残る女性の生き方に肯定的に物語を進めている作家だ。今まで読んだ鳥越の本を振り返ってみると、『和泉式部』、『一葉』、『漱石の妻』、『兄いもうと』、『花筏』、『波枕おりょう秘抄』、『建礼門院徳子』、『めぐり逢い 新島八重』などがあげられる。

 『漱石の妻』では天下の悪妻といわれた夏目鏡子をかばう立場だったし、『兄いもうと』では正岡子規の死の病床で懸命に看病するいもうとの話だった。『波枕おりょう秘抄』では、坂本龍馬の死後の彼女への追跡が印象に残る小説だった。『めぐり逢い』でも、新島八重の生き方に共感を覚えた。鳥越は、女性をかばう立場にいると感じた。

 今回の小説『秘恋』は、後世に悪女とされた足利幕府第八代将軍義正の正妻日野富子の恋の小説だった。古代や中世の小説はあまり資料が残っていないから、自由に発想を飛ばして書ける。小説としては面白かったが、本当にこういうことがあったのかどうかはわからない。

【3月9日の歩行記録】9,339歩 6.3km

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2020年2月10日 (月)

№4432 1月に読んだ本

 毎月の月初には前月読んだ本の報告をし、若干の感想を述べている。このブログを始めてからの習慣で、この頁がないと毎月が締まらない感じだ。あまり上手でもない感想文は、読者には退屈だろうが、しかしこの頁を楽しみにしてくれている方がいるから、奇特なものだ。

 私の現在の生活の中心にあるのは「読書」である。アル中とはいうが、本の中毒ってあるのだろうか。まあ、本の虫という言い方はある。どこに行くにも本を持って出かける。目的地によっては、一冊読み終えると思うと二冊目をカバンに忍ばせている。本が切れるというのは、アルコールが切れると同じようなものだ。

 本を読むのに、ある目標を持っている。毎月6000頁は読みたいと思っているが、それはなかなか難しい。最低でも5000頁は読もうと思っているが、辛うじてそれはクリアできている。途中何頁読んだのかカウントしながら、今月は予定オーバー、今月は足りないぞなどとぶつぶつ言っている。さて1月はどうだったのだろうか。14冊・5223頁を読んで、辛うじて目標クリアだ。

 それでは、何を読んだのか報告したい。

桐野夏生『路上のX』462頁 朝日新聞出版 2018年2月刊

門井慶喜『かまさん』462頁 祥伝社 2013年5月刊

神林長平『先をゆくもの達』327頁 早川書房 2019年8月刊

佐伯一麦『空にみずうみ』398頁 中央公論新社 2015年9月刊

内田康彦『北の街物語』334頁 中央公論新社 2013年8月刊

伊東潤『横浜1963』309頁 文藝春秋 2016年6月刊

楡周平『青狼記』471頁 講談社 2000年7月刊

柴田哲孝『Mの暗号』386頁 祥伝社 2016年10月刊

小手鞠るい『星ちりばめたる旗』ポプラ社 2017年9月刊

門井慶喜『シュンスケ!』349頁 角川書店 2013年3月刊

高樹のぶ子『格闘』362頁 新潮社 2019年7月刊

真保裕一『ローカル線で行こう』429頁 講談社 2013年2月刊

久坂部羊『カネと共に去りぬ』284頁 新潮社 2017年11月刊

佐江衆一『兄よ、蒼き海に眠れ』279頁 新潮社 2012年3月刊

Sdscn1786  最近、好んで門井慶喜の本を読んでいる。彼の名前「慶喜」は、徳川最後の将軍徳川慶喜と同じだ。彼の著書でも述べているのだが、親が名付けたその慶喜を気に入っているらしい。彼は推理小説作家となっているが、私が読むのはもっぱら歴史小説だ。今月読んだ本『かまさん』も、幕末の榎本武揚を描いた小説だったし、今回の『シュンスケ!』は伊藤博文の青春時代を描いたものだ。

 伊藤博文は、日本最初の首相として有名だ。さらに帝国憲法発布や議会の創設者としても名前が知れている。しかし、意外と歴史小説の舞台に載ってこない人物だ。もしかしたら、彼は朝鮮で暗殺され、そのことでイメージが悪くなっているのかもしれない。伊藤博文の幼名は、伊藤俊輔だ。この小説は、その俊輔の青春時代を描いていた。

 幕末には、長州に俊英が集まった。吉田松陰を筆頭に高杉晋作、木戸孝允、井上馨、山縣有朋など枚挙にいとまがない。なかでも吉田松陰は、長州本では神様のように描かれているのがほとんどだが、著者は俊輔をして「完全に狂人の相」と言わしめている。錚々たる志士の下働きをしながら、時代への目を養っていった俊輔は、井上馨(聞多)とイギリス密航を企てる。

 その当時は攘夷が世の中を占める精神だったが、西欧文明に触れた俊輔にとっては、目を見開かされる思いだった。

Sdscn1788  小手鞠るいという作家の本を読んだのは初めてだ。この小説は、アメリカ移民の一世がどれほど苦労してその地位を獲得していったか、その地位も日本の真珠湾攻撃で藻屑となって消えてしまったかを描いた小説だ。

 日本の無謀な戦争が、こんなところまで影響を及ぼしていたのだとあらためて思った。1916年(大正5年)、岡山から単身アメリカに渡った主人公大原幹三郎は、辛うじてアメリカでの地歩をえた。写真花嫁として、日本から佳乃が渡ってきてようやく一家をなした。当時は、アメリカの日本人排斥運動が盛んだった。ようやくメロン農家として生計を成り立たせることができ、幹三郎は、さらに不動産業にも手を出した。

 そうした中での真珠湾攻撃は、アメリカ在住の日系家族の生活を破壊してしまった。二世、三世は汚名を雪ぐべくヨーロッパの最前線に出された。その酷さを教えてくれる小説だった。

Sdscn1792  自宅には、たくさんの小説の在庫がある。だが、今読んでいるのはほとんどが図書館で借りている本だ。自宅の小説はすでに読んでいるので、再読はしない。ところが、時々手元にある図書館の本が読み終わって、手元に切れてしまう。その時に、本棚にある面白そうな本を探している。本書は、奥付の刊行月を見ると2000年7月刊になっている。20年前に読んだ本だ。

 再読してみると新鮮だった。内容は新しく読んだ本と何ら変わりがない。これは、家の中の本を時々読み返す必要があるなと痛感した。今なお精力的な制作活動を続けている楡は、20年前も変わらず光り輝いていた。

 小説の舞台は、中国の中世だ。大陸が湖朝・宋北・華感・奉金・楽天に分かれていた時代、一番小さな国楽天をどう生き延びさせるのか、その駆け引きを巡る話だった。楡周平がこういう歴史小説を書くのは珍しい。

【2月9日の歩行記録】5,805歩 3.9km

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